戦後70年を動かした「政治家の名言」

古川 貞二郎 元内閣官房副長官
御厨 貴 政治学者
後藤 謙次 政治ジャーナリスト
ニュース 政治

人生学校で学び、時代を超える言葉を残した角栄。時代と人々の胸を打ち、動かした言葉の力をふり返る

(左から)後藤謙次氏・古川貞二郎氏・御厨貴氏 ©文藝春秋

 御厨 官房長官の菅義偉さんが普天間基地の移設について、「粛々と進めていく」と述べたことに、沖縄県知事の翁長雄志さんが「上から目線の『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の心は離れて怒りは増幅していく」とやり返して一矢を報いた感がありました。政治家の言葉に改めて注目が集まった一件でしたね。

 古川さんは、村山政権から小泉政権まで事務方トップの官房副長官を務めています。多くの政治家と間近に接してきたと思いますが、一連の騒動はどうご覧になりましたか。

 古川 一般的には「粛々と」という言葉遣いがおかしいとは思いません。ただ、すでに決まったことなんだから着実に進めるよ、という意味にも取れますから、沖縄の人が「自分たちの声は一顧だにしないのか」と反発するのもわかる。菅さんは「もう使わない」と言われていますし、安倍さんも「あえて使う必要はないと思う」とおっしゃっているようですから、使わない方がよかったとは思いますね。ただ、事柄は言葉遣いだけの問題ではないと思いますが……。

 後藤 橋本政権で沖縄とのパイプ役を務めた梶山静六さんの弟子を自認している菅さんとしては、仲井真前知事を翻意させて、辺野古への移転を受け入れてもらったという思いも強かったはずです。それだけに翁長知事の対決姿勢には、悔しさと同時に沖縄とのギャップの大きさを痛感したのではないでしょうか。

 御厨 沖縄問題は難しい。そもそも基地負担が圧倒的ということもあるから、言い方は悪いですけど、何を言ってもダメというところもあります。普天間基地移転を決めた梶山さんと比べると、菅さんは沖縄に関しては素人で、深く沖縄の状況を知った上での発言ではないですからね。

佐藤栄作が書き残した沖縄への思い

 後藤 やはり菅さんの沖縄に対する距離感が出たと思うんです。佐藤栄作さんが那覇空港で行った「沖縄の返還なくして日本の戦後は終わらない」という有名な演説があります。あれも非常に立派でしたが、『佐藤栄作日記』を読むと、デモ隊に囲まれながら名護上空をヘリで視察したときに、〈耕して山巓に達し、平地は軍基地、ほんとに気の毒な状況〉と書き残している。

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source : 文藝春秋 2015年06月号

genre : ニュース 政治