カラーマンガで描かれる巨匠たちの群像劇
2009年は日本のマンガ界において特筆すべき年になった。ヤマザキマリ著『テルマエ・ロマエ』第1巻が発売されたからだ。のちに爆発的ヒットを記録した同作だが、発売当初は海外在住のマンガ家が手がけた、「ローマ風呂」がテーマの一風変わった内容のマンガということで、じわじわと話題になり、まもなく人気に火がついた。私が同作を手に取ったのは発売2ヶ月後のことで、あまりの面白さに文字通り爆笑したことをよく覚えている。
アートであれ小説であれマンガであれ、やはり傑作とはどんなに地味に構えていてもその輝きは隠せないものだ。ローマ時代と現代の日本をマンガというメディアで繋いでしまった著者の発想は、すぐれた文化芸術は時空も国境も超えて伝わるものなのだという、アートの普遍的な定義をあらためて明示するものだった。
あれから13年。『リ・アルティジャーニ』を一読して、これこそ著者が最も描きたかった一作に違いないと確信した。
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source : 文藝春秋 2022年11月号