ハンコ廃止、書類のPDF化、Zoom会議……コロナ禍で進んだ業務改革。だが、これらはDXにあらず。異色の元経産官僚は語る。「DXはデジタルで考えるな」と。本質を掴むための「思考法」を今こそ身につけよう。
(にしやまけいた 1963年、東京生まれ。1985年、東大法学部卒業後、通商産業省入省。産業革新機構執行役員、東京電力HD取締役、経済産業省商務情報政策局長等を歴任し、2020年に退官。現在は東大未来ビジョン研究センター客員教授。)
DX(デジタルトランスフォーメーション)はコロナ禍で最も流行した言葉の一つだ。とはいえ、「デジタル化」や「IT化」と一体何が違うのか。ピンときていない人も多いはず。
そんな中、「これぞDXの真髄だ」と各所で話題の本がある。元経産省商務情報政策局長で東大客員教授の西山圭太氏の『DXの思考法 日本経済復活への最強戦略』(小社刊)。発売から4カ月で2万8000部(電子版を含む)を記録した。
小誌は3月にサブスクリプション「週刊文春電子版」をスタートしたばかり。電子版コンテンツディレクターの村井弦が“DXの案内人”西山氏に話を聞いた。
――まさに今、小誌では「紙の雑誌のデジタル展開」を進めています。“週刊文春のDX”のヒントになるようなお話も伺えたらと思っています。
西山 冒頭で言うことじゃないかもしれませんが、そもそも私は「DXはデジタルで考えるのは間違いだ」と思っているんです(笑)。多くの方が勘違いしていますが、「何かをデジタルに置き換えること」はDXの本質ではありません。
DXは企業や組織の「あり方」を問うもの。すなわちCX(コーポレートトランスフォーメーション)であり、IX(インダストリアルトランスフォーメーション)でもある。デジタル技術のエッセンスを活用して会社や産業を「丸ごと作り変えること」だと考えています。
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source : 週刊文春 2021年8月12日・19日号