「オリパラが感染拡大につながっていないと発言している人は、恥ずかしくないのでしょうか。海外ではワクチンの有効率が大幅に下がるデータも出ており、もはやワクチン一本槍では収束は難しくなっています。ここまで厳しい状況になるなら、社会から批判を受けてもいいから、もっと身体を張ってでも政府に強く進言しておくべきでした」
こう語るのは、京都大学大学院・西浦博教授(43)。厚労省感染症対策アドバイザリーボードの一員だ。
西浦氏がかつてないほど、悔いを滲ませるのはなぜか。西浦氏は、今夏の東京五輪について、開催すれば医療逼迫のリスクが高まるとし、「1年延期」を提唱。開催が事実上決まった6月には、政府分科会らのメンバーと無観客開催を求めた。
だが、東京の新規感染者数は爆発的に増え、全国の新規感染者数も連日2万人超。重症者数も過去最多を記録し続け、自宅療養者数は12万人近くに達した。
1都3県で自宅療養中に亡くなったのは8月だけで30人を超えている。
「五輪の途中で医療体制が逼迫し、国民も厳しい現実に気付き始めた。自分はもちろん、大切な人が守れない状況になっているのだと。パラリンピック指定の病院が、組織委の要請を受けた重症者の受け入れを断っていたことも判明しました。恐れていた事態が起こってしまった。『政府から徹底的に嫌われてでも、強く止めておくべきだったのではないか』と、この惨状を見て痛感しています」
ただ、政府は、五輪開催と感染拡大の関連性を否定し続けている。菅義偉首相は「五輪が感染拡大につながっているとの考え方はしていない」と強調。丸川珠代五輪担当大臣は感染拡大の原因でない根拠を問われ、視聴率の高さを挙げた。
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source : 週刊文春 2021年9月9日号