「安達さんがボソッと言う『あれが轟(とどろき)さんが初めて監督した作品よね』のセリフのトーンとか、『これやねん!』と思いながら、僕も演じていました。安達さんの芝居を受け、昔を懐かしむ気持ちになりながら、感情がしっかり出せました」
轟監督役の土平ドンペイが演技を絶賛するのは、プライドばかり高い“大根役者”美咲すみれを演じる安達祐実(40)だ。
2歳の頃からモデルとして活動。1994年、12歳で主演したドラマ「家なき子」(日本テレビ系)で天才子役の名をほしいままにした安達にとって、ヘタクソな女優を演じるのは、殊の外難しかったという。
「台本には『棒読み』くらいしか書かれておらず、加減がわからなかったそうです。安達さんは『ものすごく下手なのか、ちょっと下手なのか、どの程度がいいんだろう?』と休憩中に川栄(李奈)さんに相談していました。みんな、安達さんには天才子役のイメージを持っているので、彼女が大根役者の演技をすると笑いをこらえるのが大変で、カットがかかると川栄さんやスタッフが大爆笑していました」(NHK関係者)
すみれ役は安達にない要素ばかり。居酒屋で川栄を相手にくだを巻くシーンもあるが、実際の安達は下戸だという。
そして、すみれは台本に演技についてびっしり書き込みをする“意識高い系”だが、当の安達は「ほとんど何も書かない」と公言するなど、台本は真っ白だという。安達と仕事をしたことのあるスタッフが語る。
「彼女みたいに優秀な役者ほど準備し過ぎない。相手が違う芝居してきたら、そこで臨機応変に変えていかないといけないので。芦田愛菜さんもそうですけど、天才子役と呼ばれた人って、小さい頃からすごく本を読む。安達さんもたくさん小説を読むそうです。それで台本から役をイメージする想像力がつくんですかね」
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source : 週刊文春 2022年3月17日号