細田博之衆院議長のセクハラを巡る記事が、国会で物議を醸しています。「週刊文春」では、前号で「細田博之議長 女性記者に深夜に『今から家に来ないか』」と題する記事を掲載しました。ワイドと呼ばれる1ページほどの記事です。これに対して、細田議長は「事実無根」と抗議文を小誌に送り、あわせてその文面をメディアに公開しました。

 小誌記事では、セクハラに関して複数の証言を掲載しています。そのすべてを一括して事実無根というのです。つまり、セクハラはなく、「週刊文春」は嘘を書いているということ。セクハラは“加害者”と“被害者”で解釈が180度違うことは珍しくありません。特に発言は、加害者がハラスメントとは思っていなかったという言い訳がよくなされます。ところが、細田議長の主張は事実無根。こうなれば、解釈の問題ではなく、100かゼロかの話になります。嘘をついているのは、「週刊文春」なのか、細田議長なのか。

 そこで、今週号は右トップで、もう一度、この問題を徹底取材しました。すると、新たな告発や物証がもたらされたのです。

 それにしても、よくわからないのは、前回も今回も小誌の事実確認に、細田議長から一切回答がなかったことです。今週号の記事では、人妻を「抱きしめたい」と誘った疑惑など、新たな問題についても質問しましたが、これにも回答なし。事実無根の自信があるなら、なぜ回答しなかったのか。

 記事をお読みいただければわかる通り、多数の当事者の証言を得ています。会社や業界の違う女性たちが、我々の知らないところでつながっており、全員で嘘をついて「週刊文春」を騙して、細田議長を陥れようとしているのか。あるいは「週刊文春」がこれだけの証言者や証拠を捏造したのか。そんなことがありえないことは、ご理解いただけると思います。

 もう一つわからないことがあります。「週刊文春」では、これまで政治家のスキャンダルを報じてきました。小誌だけが、証拠や証言者を確保していて、他のメディアが検証できないことは多々ありました。甘利明経済再生相や菅原一秀経産相、河井克行法相のケースなどはまさにそうでした(肩書は報道当時)。ところが、今回は違います。自社の女性記者がセクハラにあったことはないのか、あるいは政治部記者たちは細田議長のセクハラを見聞きしたことはないのか。簡単に裏がとれるのです。なぜ、自社の記者たちを調査し、報道をしないのでしょうか。

 最近、読んだ本で抜群に面白かったのが「キャッチ・アンド・キル」です。長年タブーだったハリウッドの性的虐待をスクープし、#MeToo運動が始まるきっかけを作ったローナン・ファロー記者(ウディ・アレンとミア・ファローの息子)が書いたノンフィクションです。業界では知られていたのに、メディア、政界、司法が癒着し、封印されていた大物プロデューサーの性的虐待を、被害者たちに粘り強く取材し、ついに明るみに出した。スクープに至るまでには、法的脅しはもちろんのこと、尾行されるなど凄まじい妨害がありました。何より衝撃的だったのは、当初、ローナン・ファロー記者が所属していたNBCでは報じることができず、雑誌の「ニューヨーカー」に持ち込んで、ようやくスクープは日の目を見たことです。

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source : 週刊文春