「力及ばなくて申し訳ありません」
法廷を出た直後、弁護士に告げられて、赤木雅子さんは思い出した。
「この言葉聞くの2回目や」
最初は4年前。夫、赤木俊夫さんが亡くなった翌月。俊夫さんの主治医の精神科医が深々と頭を下げた。
「私の力が及ばなくてこんなことになって申し訳ありません」
夫が死んだのは主治医のせいではない。誠実に対応してくれなかった職場のせいだ。今回、裁判で起きたことも弁護士のせいとは思っていない。お詫びをする必要のない二人が謝ってくれて、お詫びをすべき人は誰も謝ってくれない。そんな不条理を感じながら雅子さんは心の底から実感した。
「私、負けちゃったんだな」
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source : 週刊文春 2022年6月9日号