「13人の御家人たちのなかで個人的な“推し”は、梶原景時です」(「文藝春秋」22年1月号。三谷幸喜氏のインタビューより)
その景時を演じているのが、歌舞伎役者の中村獅童(49)だ。
三谷さんの『新選組!』に出た時は狂言回しみたいな三枚目の役、『いだてん』では声の大きな主人公・金栗四三のお兄さん役でした。今回もひょうきんな役かなと思っていたら、意外にも渋い役だった(笑)。実は以前、鎌倉に十年近く住んでいました。山に海、神社仏閣……都心では味わえない風景があります。最近も、家族で頼朝が信仰した寒川神社にお参りに行ったりもしました。大好きな鎌倉が舞台の作品ということもあって、やりがいを感じています。
ただ、歌舞伎と大河では、大きな違いがありますね。まず歌舞伎はマイクを付けない。約2000人のお客様に届かせる発声法があって、そのために幼い頃から長唄や義太夫の稽古をしています。かたやテレビは、大声を張らなくても、録音部の方が音を拾って下さる。だから大仰な演技より、リアルな演技に集中できます。
もう1つ、新作歌舞伎は別ですが、古典歌舞伎には、演出家というものが存在しません。その意味で、自分自身がある程度、演出家の役割も担わないといけないんです。でも、テレビは違う。脚本家や監督がいらっしゃいます。だから僕はなるべく台本通り、監督の指示通りに演じて、リアルな役柄を構築していくことを心掛けている。それぞれの作品、役柄に染まることのできるような役者でありたいと考えています。
でも、大河のような時代劇の場合、歌舞伎で培った所作も生きてきますね。菅田(将暉)君とは映画『キャラクター』で共演して以来、我が家に遊びに来てくれたり、仲良くさせてもらっていますが、彼が時代劇特有の所作で少し苦しんでいた時、「こうやったらやりやすいのでは」とちょっとしたアドバイスをしたことがありました。といっても、菅田君は演技に音楽に本当に才能豊かな役者。いつも大きな刺激を受けています。
「鎌倉殿」には、何人もの歌舞伎役者が出演しています。市川染五郎君も話題になったし、(坂東)彌十郎兄さんの存在を大勢の視聴者の方に知って頂けたことも凄く嬉しかったですね。僕は最近、SNSで隈取した息子の姿を発信したりしていますが、これも若い方に歌舞伎に関心を持って欲しいから。是非、大勢の方に歌舞伎の舞台にも足を運んで頂きたいと思っています。
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source : 週刊文春 2022年6月16日号