「仕事中にLINEで合格の知らせが届いたんです。大丈夫だろうとは思っていましたが、ホッとしたというのが正直な心境です」

 8月17日、関西棋院は「世界最年少棋士」が誕生したと発表した。弱冠9歳4カ月の少年の名は藤田怜央(れお)君。冒頭のコメントは、父の陽彦さん(42)のものだ。

 怜央君は関西棋院の「英才特別採用」の適用第一号となった。これは原則12歳未満で、囲碁棋士として将来性豊かな子供をプロの世界で鍛える事を目的とした制度。通常は「院生(研修生)」になるか、採用試験を受ける必要があるが、怜央君の場合はスカウトされた格好だ。

目標は「世界一」

 国内では2019年に別団体である日本棋院に、英才枠で入段した仲邑菫二段(13)の10歳0カ月を上回る快挙となる。

 怜央君のプロ入りまでの道のりは平坦ではなかった。仲邑二段や井山裕太四冠(33)らスター棋士が多く所属する日本棋院の院生だったが、対局前に食欲が低下し、指の爪がなくなるまで噛んでしまうなどストレス由来の行動が見られたため、今年4月に退会していたのだ。

「対局が楽しみ」と仲邑二段

 途切れたプロへの道。そこに手を差し伸べたのが関西棋院だった。ライバルの日本棋院の関係者が嘆く。

「英才枠での推薦に乗り出したんですが、関西棋院に遅れをとってしまった」

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source : 週刊文春 2022年9月1日号