「自分から取り組む探求心があり、朝から晩まで熱心に研究をしていた。周りも認める優秀な研究員でした」
こう語るのは9月16日、妻にメタノールを飲ませて毒殺した容疑で警視庁に逮捕された、吉田佳右容疑者(40)の元上司である。
製薬大手・第一三共社員で、品川研究開発センターに所属していた吉田。今年1月、大田区の自宅で妻・容子さん(40)を、毒殺した疑いがもたれている。
「容子さんはベッド脇で倒れている状態だった。吉田は自ら119番し、任意の聴取には『二日酔いだと思った』などと語っていた。だがメタノールの服用が死因と判明し、状況からして夫以外の第三者が混入させることは不可能とみて犯行を断定した」(捜査関係者)
メタノールは無色透明の液体だ。多量に服用すると嘔吐や血圧低下、呼吸困難から死に至る。
「吉田はメタノールを入手できる立場にあり、研究所から持ち出し、妻が愛飲していた焼酎に混ぜて飲ませたとみられる。遺体にはのたうちまわって苦しんだことを示す皮下出血が複数あり、残忍な手口だった」(同前)
第一三共は日本の製薬業界を代表する企業で、2021年度の売上高は連結で約1兆448億円。社員の平均年収は1000万円余りだ。経済的余裕も十分にあったはずのエリート研究員は、なぜ凶行に走ったのか。
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source : 週刊文春 2022年9月29日号