物価上昇率は2%に迫り、目標を達成したかに見えるアベノミクス。だが、急激な円安を筆頭に経済に高揚感はない。それはなぜか。
時計の針を10年前に戻そう。衆院解散を翌日に控えた2012年11月15日、後の内閣官房参与、本田悦朗氏の携帯電話が新幹線の車内で鳴った。
「おい本田君! 凄い、本当に為替や株が動いた!」
声の主は、首相の座を目前にした自民党総裁の安倍氏。その日の講演で「2〜3%のインフレ目標を設定し、無制限の緩和をしていく」と発言すると、一気に円安・株高が進んだのだ。
本田氏が振り返る。
「私は、デフレ脱却のためには日銀が無制限に国債を買い入れて金融緩和すべきで、それが円安、株高、賃金増加、物価上昇へと波及することを進言していました。その効果がすぐに表れた事に驚いたのでしょう」
この年の12月末に第二次安倍政権が発足し、翌13年1月には政府と日銀の共同声明を発表。これは史上初めて日銀が物価目標を認めた文書として、極めて画期的なものとされた。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2022年10月6日号