歌舞伎界を代表する名役者に恋をした壇蜜似の女性は、公演に通いつめ、会社も辞めた。そして2年前、公園でキスを交わし、大阪公演で熱い夜を過ごし、彼女の体中には…。熟女キャバクラで働きながら、今も続く人間国宝との道ならぬ恋。
秋真っ盛りの10月3日、「登山の日」。この日は、温暖な気候に恵まれていた。
品川神社の境内に聳える人工の山「富士塚」。夕方、急な山道をしっかりとした歩みで登るのは、すらりと伸びた手足が印象的な老紳士。ジーンズにストライプの白いワイシャツというラフな格好で、頭にはゴルフの帽子をかぶっている。
その傍らには、寄り添うように歩を進める色白で華奢な女性。彼女もまた黒のノースリーブに、ショートパンツと、歩きやすい服装で、同じく帽子姿だ。
2人は山頂に辿りつくと、並んで腰を下ろした。自然と近くなる互いの距離。眼下に広がる、品川の街を眺めながら、男性は彼女の腰に手を――。
この健脚の老紳士、実は歌舞伎界を代表する名優、15代目・片岡仁左衛門(78)である。
350年以上の歴史ある上方歌舞伎の名跡・片岡仁左衛門。その13代目の三男として生まれた。5歳で、本名の片岡孝夫の名で初舞台を踏む。177cmと歌舞伎役者にしては長身で細身の身体で、1964年、『女殺油地獄(おんなころしあぶらのじごく)』の与兵衛を好演し、「大阪に孝夫あり」と言われた。98年に15代目を襲名。5代目坂東玉三郎との“孝玉コンビ”は女性を中心にブームを巻き起こす。人呼んで「ニザ様」。
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source : 週刊文春 2022年11月10日号