セブン&アイ・ホールディングスは3月9日、傘下のスーパーマーケット「イトーヨーカ堂」店舗の大幅削減などを盛り込んだ新たな経営計画を発表した。

「イトーヨーカ堂は二期連続最終赤字と業績が低迷していた。2026年2月末までに全体の4分の1にあたる33店舗を削減する計画です。自社が運営するアパレル事業からも撤退し、食品事業に注力する旨を発表しました」(経済ジャーナリスト・森岡英樹氏)

 背景にあったのは、“物言う株主”からの圧力だ。

「セブン&アイ株を、4.4%保有する米バリューアクト・キャピタルです。昨年2月には75頁に及ぶ書簡を公開。コンビニ事業のセブン-イレブンに経営資源を集中させ、他の非中核事業から撤退するよう求めてきた。更に『社内の政治的対立が度々言及される』『解読不能な組織図』などと、同社の経営体制を痛烈批判しました」(同前)

 セブン&アイは新経営計画を発表した翌10日、本部社員と各店舗の管理職向けにオンライン視聴も可能な説明会を開催。小誌は説明会の音声を入手した。

 それによれば、最初に登壇したのは、創業者・伊藤雅俊名誉会長の次男、伊藤順朗常務取締役。バリューアクトなどを念頭に置く形でこう釈明した。

「株主や投資家からは『SST(スーパーストア)事業は(略)グループ連結から切り離すことをすべきじゃないか』と、非常に厳しい指摘・提言を受けています。これは、昨日今日始まったことではありません。何年にもわたって言われ続けてきたことです」

 セブン&アイにとって、イトーヨーカ堂は祖業。“物言う株主”から押し切られたことに悔しさを滲ませたのは、石橋誠一郎常務だ。

「私自身、“戦う準備は整った、これからだ”、このように考えておりましたけども、残念ながら……資本市場からは……現状の業績……それとスピード感……に対して、ノーを突き付けられている状況です。とても悔しいです……」

 そう声を詰まらせるのだった。

 他方、イトーヨーカ堂の山本哲也社長はマスコミ報道への不満を覗かせた。

「マスコミはやはりセンセーショナルに書きます。閉店や自営アパレルの撤退ということが書き綴られ、皆様方には本当にご不安な気持ちをさせてしまったことについては心よりお詫び申し上げます」

イトーヨーカ堂の山本社長(セブン&アイのHPより)

 セブン&アイは説明会の開催を認め、「詳細については差し控える」とした。

 奇しくも、説明会が行われた3月10日に“カリスマ創業者”はこの世を去った。イトーヨーカ堂も変革の時を迎えている。

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source : 週刊文春 2023年3月23日号