久しぶりに感激した。喫茶店でアメリカンを受け取るとき、女店員から「もし濃すぎるようなら、遠慮なくおっしゃってくださいね」といたわるようにやさしく言われたのだ。薄くするには湯を足すだけでいいのだが、胸に大きく響いた。

「それぐらいのことで大げさだ」と思うかもしれないが、それほどやさしさに飢えているのだ。思えば中年のころから世間の風が冷たくなり、いつしか秋風が木枯らしに変わり、いまでは自分でも社会の邪魔者としか思えなくなっている。相手にしてくれる人もいない。たまに近づく者がいたら、オレオレ詐欺か強盗だ。だから店員のやさしさは、わたしにとっては干天の慈雨だった。

初回登録は初月300円で
この続きが読めます。

有料会員になると、
全ての記事が読み放題

  • 月額プラン

    1カ月更新

    2,200円/月

    初回登録は初月300円

  • 年額プラン

    22,000円一括払い・1年更新

    1,833円/月

※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。

有料会員になると…

世の中を揺るがすスクープが雑誌発売日の1日前に読める!

  • スクープ記事をいち早く読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
  • 解説番組が視聴できる
  • 会員限定ニュースレターが読める
有料会員についてもっと詳しく見る
  • 0

  • 0

  • 0

source : 週刊文春 2023年4月20日号