「高級『生』食パン」店をチェーン展開する「乃が美」が危機を迎えている。

「100に上るフランチャイズチェーン(FC)店舗が閉店に追い込まれる可能性が高い」(乃が美関係者)

 2013年設立の乃が美は“高級食パンブーム”の火付け役。「1日5万本売るパン屋」として多くのメディアで話題に。最盛期には全国で200超の店舗を運営し、行列ができた。

芸能人の“愛好家”も多かった(乃が美HPより)

 だが、ブームに翳りが見え始めた頃にコロナ禍に突入。業績が下降する中で顕在化したのがFC店舗のオーナーと本部の対立だった。

「店舗の大半はFCで直営店は少ない。店舗の売上が激減して赤字に陥る中、オーナーたちは〈売上の10%〉というロイヤリティの引き下げを求めてきましたが、本部はほとんど応じてこなかった」(同前)

 今年1月には複数のオーナーが連名で「要望書」を内容証明で本部に送付した。すると、本部はFC6社に対して契約解除を通告する形で対抗。“泥沼内紛劇”が繰り広げられていた。

 そんな中、本部はさらなる強硬手段に打って出た。現役オーナーが明かす。

「5月12日付で『1週間以内に遅滞したロイヤリティを支払わなければFCの契約解除も辞さない』という通知が届きました。受け取ったのは10社です」

 すでに契約解除を通告された6社と合わせると店舗数は全体の7割、100近くになる。乃が美HPによると、国内の店舗数は直営店を含めて141。仮に100店舗が閉店すれば、残るのは、40店舗程度だ。

「ロイヤリティの分割払いを打診している一部のオーナーもいるが、本部が応じるとは思えない。このままだと、多くの店舗が消滅しそうです」(別のオーナー)

 強硬な“取り立て”の背景には、本部の厳しい懐事情も垣間見える。

「経営難は当然FCだけではない。直営店も同様です。本部も毎月かなりの額の赤字を出しており、ロイヤリティ回収は死活問題です」(前出・乃が美関係者)

 さらに、5月半ばには、今年2月に就任したばかりの新CEO・関駿一郎氏が僅か3カ月で辞任している。

「関氏は大株主のファンドが招いたコンサル会社の人。『クリスピー・クリーム・ドーナツ』の再建に携わったという評判で、乃が美の立て直しを任せられていましたが……」(同前)

 乃が美本部にオーナーへの通知とCEO辞任について聞くと、こう回答した。

「契約解除を含めた措置を検討する旨は述べたことがありますが、契約解除の通告はしていません」

「(辞任は)事実です。理由は(関氏がコンサル会社を)一身上の都合により退職されることに伴うものであると伺っています」

 崩壊へのカウントダウンは始まっている。

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source : 週刊文春 2023年6月8日号