装いは人生に寄り添ってくれる相棒のようなもの｜霜鳥まき子

「89歳の母の願いを叶えてあげてください」という、長年のお客様からのメール。体を壊されて寝たきりの状態が7年ほど続く中で、介護をする娘さんに「洋服を買いに行かせて」と懇願されたそうです。介護タクシーと車椅子を使って90分以内の買い物なら大丈夫ということで、ショッピングの効率を良くして負担を減らすため、お手持ちの洋服とご本人のお写真を事前に見せて頂きました。お洋服好きとひと目でわかる華やかな服のラインナップに、好きな事ができていない苦しみを私に訴えるような眼力。実は、決行日の直前に体調を崩され2度キャンセルになり、まだ実現していないのですが、ご本人がショッピングを楽しみにされ「生きる」という気持ちが強くなっていると聞き、装いの力を借りようとしているのではと思えてなりませんでした。命をつなぐアイテムを提案しなければと思っています。

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source : 週刊文春 2024年2月29日号

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