THIS WEEK 国際・経済

「悪い話」は無視 株価最高値を呼ぶ投資家たちの楽観

 株価の上昇が続いている。

「七日に今年最高値となる九千三百円台をつけて続伸し、昨年十月以来の一万円台に迫る勢いです」(経済部記者)

 上昇のきっかけは、米金融当局が七日に発表した米金融機関十九社を対象にした“ストレステスト”だった。

「テストの結果、今後景気が低迷しても、全体で資本不足は七百四十六億ドルで、公的資金枠約千三百億ドルの枠内で処理できる見通しとなった。予測よりもいい数字だったため、金融システム不安にひと息ついた、との見方が広がり、NYダウが上昇、日本の株価も連動した」(同前)

 だが、悪い材料には事欠かない。トヨタは史上初の二年連続赤字の見通しを発表。GMは破産法適用の申請が現実味を帯びる。米国の失業率は八・九%(四月)に悪化した。

 こんな状況なのに、株価が上昇するのはなぜなのか。

「日米両政府の景気刺激策、景気回復を先取りしたい投資家心理など理由はいくつか考えられますが、政府自体が本年後半の景気底入れシナリオを匂わせているため、投資家が『悪いニュースは無視し、良いニュースだけを材料とする』状況になっているのも大きい」(ロバーツ・ミタニLLC代表の神谷秀樹氏)

 慶應義塾大学准教授の小幡績氏も、市場ムードの変化が大きいと話す。

「市場はファンダメンタルズ(実体経済)ではなく、センチメンタリズム(市場ムード)で動いています。米国の失業率も毎月五十万人以上も失業者を増やしているのに、増え方が減ったと喜んでいる。昨年一月には、五万人の失業者増で大騒ぎしていたんです。

 加えて今回は、へッジファンドの不在も大きい。従来なら株価が上がり過ぎたと見なした彼らが売りを浴びせるところなのに、今は投資家から資金を引き揚げられてしまったため、身動きがとれない」

“根拠なき楽観”はいつまで続くのか。小林慶一郎氏(経済産業研究所上席研究員)は、ひとつのきっかけで局面は大きく変わると話す。

「実体経済を示す指標はまだ厳しく、この株高は一時的なものと見ています。今後、米住宅価格のさらなる下落や、欧州金融機関の破綻など何かひとつマイナスがあれば、一気に逆のスパイラルに陥る恐れがあります」