米アップルの新商品発表イベントが現地時間九日、サンフランシスコで開催された。約一年ぶりに公の場に現れたスティーブ・ジョブズCEOをスタンディング・オベーションで迎えた観客が観たのは、激ヤセしたカリスマの姿だった。頬はこけ、頭髪は薄くなり、嗄(か)れた声でプレゼンする様は、五十四歳にしてまるで隠居寸前の老人。眼光鋭く自信満々に語る野心家クリエイターの姿はなかった。
この日、五カ月前に交通事故死した二十代の若者から肝臓移植手術を受けたことを自ら明かしたジョブズだが、〇四年、膵臓ガンの手術以降、その健康問題は全米の関心を集めてきた。昨年、激ヤセが指摘されたとき、同社はウイルス性の胃炎と発表。今年始めにはホルモンバランスの異常でタンパク質が摂取出来ない、とも明かし、憶測は憶測を呼んできた。
「アメリカではジョブズの健康面に関する報道合戦が起こり、その『まとめサイト』まで登場。挙げ句はブルームバーグが『死去』と誤報を流して大問題になりました。投資家のウォーレン・バフェットも経営者の健康状態に関して情報を開示すべき、とアップルを批判しました」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏)
そして、半年間の療養休暇を経ての「復活」だったのだが、火に油を注いでしまった。
イベントでは音楽プレーヤー「iPod」の新製品を発表したが、その前日、日本国内におけるライバル、ソニー「ウォークマン」も新機種を発表。国内販売シェアも四年八カ月ぶりにウォークマンに抜かれた直後だっただけに余計「憔悴感」が漂う。
「かつてはiPodの一強皆弱だったのが、ウォークマンが四割までシェアを伸ばしたのは注目すべき。特に若い世代はiPodのブランドよりも、シビアに価格の安さ、バッテリーの性能で選んでいる」(ライター・田下広夢氏)
潜在的なiPodユーザーがiPhoneに流れているという側面もあるのだが……。
イベントではフィル・シラー上級副社長がiPodは人類史上最も成功した製品で、世界で二億二千万台売れ、シェアは七三・八%だと強調。「二番手は『その他』になってしまっている」と豪語したが、極東から「その他」が猛追する勢い。年末商戦の激化は必至。まずはお大事に。
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