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「心不全パンデミック」は防げるか? 混乱の国会で新法成立

 日本人の死因第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患(脳卒中)」と、血管などの循環器が関係する疾患だ。いずれも高血圧や糖尿病などの生活習慣病と深い関係があり、予兆がなく突然発症することも多い。また、脳卒中は「寝たきり」になる原因第1位でもある。

 近年では心疾患のひとつ「心不全」に自覚症状もないまま罹患する「隠れ心不全」の患者が増えている。今後、高齢化が進むにつれ、心不全が爆発的に広がる「心不全パンデミック」が起きるのではないかとも懸念されている。

"心不全パンデミック"を警告する磯部光章医師

 そんななか、臨時国会最終日の12月10日、「脳卒中・循環器病対策基本法」が衆院本会議で可決、成立した。これは、心疾患や脳卒中などについて医療体制を整備し、研究を促進することが目的の法案だ。これまで、死因第1位の「がん」については2006年に「がん対策基本法」が成立し、医療体制が拡充されたのに対して、脳卒中・循環器病は法整備が遅れており、基本法制定は喫緊の課題だったのだ。

 法制化に尽力した榊原記念病院院長で循環器専門医の磯部光章氏はこう振り返る。

「患者・医療関係者が本当に待ちに待っていた制定でした。そもそも2008年に脳卒中関係者から出された法案でしたが、2014年に一旦廃案になってしまいます。そこで個別疾患に限定するのではなく、心臓病や他の循環器疾患を合わせた包括的な基本法を目指すことになったのです。

 日本心臓財団、日本循環器学会、日本脳卒中協会が中心となり、多数の患者団体が一体となって『脳卒中・循環器病基本法の成立を求める会』を結成、活動してきました。しかし、複雑な政治の状況もあり、これまでの活動は難航を重ねました。2017年5月には参議院議員会館において国会議員136名を集めた集会が開かれたものの上程には至らず、2018年11月21日に再度の大集会が開催されました。全員、今度こそという思いが非常に強かった」

 磯部医師は基本法の意義を次のように説明する。

「我が国は未曾有の超高齢社会を迎えており、脳卒中・循環器病での死亡者数はがんによる死亡数に匹敵し、増え続けています。罹患した人は、死亡を免れても長期にわたっての過酷な闘病生活を強いられます。家族、社会にとっても負担が大きい疾患です。また医療費や診療・介護に多大な国の資源が消費されています。

心臓弁膜症の手術(イメージ)

 しかし血管病に起因するこれらの循環器病は予防が可能であり、また適切な救急医療によりその後の経過を著しく改善することが出来、また再発の予防も可能です。これらを実現するためには国の力が必要です。

 基本法の制定によって、今後、脳卒中や心臓病の予防、健診、救急医療体制、病院の機能分担、医療機関同士の連携体制、再発予防、就業支援、患者の福祉・サービス、疾患登録・実態調査、研究・開発等が大きく変わっていくことが期待されます。

 ただ、具体的にどのような改革を目指すかはこれからの課題で、今後の活動が大事になります」

文藝春秋1月号

「文藝春秋」2019年1月号「死に至る病『隠れ心不全』を見逃すな」では、磯部医師が、自覚症状のない「隠れ心不全」の早期発見のサインなどについて詳しく解説している。

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