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「自分の意志が曲げられるとは……」忘れられない平成“5つの非公式な”天皇の「お言葉」

公式ではないからこその、強いメッセージ性

2018/12/23
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 本日は、平成最後の天皇誕生日である。例年どおり、今年も今上天皇の「お言葉」が公開され、様々な解説や解釈が行なわれるだろう。

 ただ天皇の「お言葉」は、こうした公式のものだけではなく、側近や関係者などから漏れ伝わってくる非公式のものも見逃せない。というのも、そこにこそ、しばしば天皇の本心や感情が直に表れているからである。

 そこで以下では、平成年間の非公式な「お言葉」を厳選して5つ紹介したい。みなさんは、いくつご記憶にあるだろうか(以下、今上天皇は天皇と略す)。

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「先例を云々するのはおかしい」(平成9年)

 まず天皇といえば、沖縄は外せない。天皇は、皇太子時代より沖縄への思いを強調し、折に触れて現地の叙情詩である琉歌も作ってきた。

 1997年2月、屋良朝苗が亡くなった時も、その思いの一端が明らかになった。屋良は、沖縄復帰後にはじめて県知事を務めた政治家だった。天皇はその訃報に接するや、葬儀に花を供えるように希望した。

2014年沖縄訪問の際の両陛下 ©︎JMPA

 ただ、天皇皇后の供花には基準があった。県知事の経験だけでは、それを満たさなかった。渡邉允侍従長がそのことを指摘すると、天皇は、いつにない口調でこう述べた。

「屋良さんは普通に県知事を経験した人とはちがう。沖縄が日本に復帰して初めての沖縄県知事を務めたという人は他にいないはずだ。先例を云々するのはおかしい」(渡邉允『天皇家の執事』)

 そして天皇は、屋良夫人に弔慰も伝えるように指示した。渡邉侍従長はみずからの浅慮を恥じて、すぐに天皇の指示どおり対応したのだった。