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連載近田春夫の考えるヒット

『中学聖日記』主題歌を歌うUru J-popの本質は変わらない――近田春夫の考えるヒット

2018/12/29

『プロローグ』(Uru)/『レイメイ』(さユり×MY FIRST STORY)

絵=安斎肇

 昔は、この季節というとなんだかワサワサしていて、それこそ“師走な感じ”が巷にやたらと溢れていたものだ。

 ラジオひとつとってみても、私の生まれ育ったあたりではFEN(Far East Network)が聴けたから、ひっきりなしにクリスマスソングは流れてくるわ、また、各レコード会社の、宴会的用途を当て込んでの“下世話な企画モノ”のプロモーションが功を奏してか、民放など、昼間っから景気のつく曲ばかりをかけていた。

 そうだ。我がご幼少のみぎりには、このシーズンに限らず、街頭にいつも“音”がほどよく溢れていましたよね。

 正式にはなんと呼ぶのか知らぬが、エリアがものすごく限られた、いわゆる有線放送があって、商店街の電信柱に取り付けられたスピーカーから、素敵な声の女性アナウンサーの“お知らせ”の合間を縫っては、歌謡曲/流行歌が自然と耳に入ってきたりする。我々はそんな“番組”を様々な場所で楽しむことが出来た。

 よく思い出すのは、小学校の帰り道にバスを待っていた、目黒権之助坂商店街の“音の鳴っている風景”だろうか。

 その時代のあったればこそ、自然と口ずさめるようになったヒット曲が、きっとこの俺にも相当数ある筈である。

 昔は流行り歌ってそうやって“タダ”で覚えたもんなんだよなぁ。そこが今とは違う。とかなんとか、一瞬思ったのだけれど、考えてみれば、この時代こそ音楽はいくらでも“タダ”で聴けるのである。今週取り上げた2曲にしろ、いとも簡単に! web上でチェック出来るではないか……。

 ただその“タダ”と、かつての“タダ”は、なにか“タダ”の意味が同じではない気がしてしかたがない。のだが、この件については、紙幅の関係もあり、いずれ感想を述べるということでご勘弁願うとして、主体的に受容する「オンデマンド」というのは要素として大きいのではないか、と私は思うものである。

プロローグ/Uru(ソニーミュージック)TBSドラマ『中学聖日記』主題歌。YouTubeでの活動が注目され2016年メジャーデビュー。

 ところで。Uruだが『プロローグ』が各種配信ランキングで軒並み一位獲得という。“配信”が、いま述べた文脈と何処かで関わっているのか、そこはなんともいえぬ。聞けばこの人も動画サイトからブレイクしたという。インターネットから人気者の出る時代となったが、jpopの本質は――CD中心の時代と――さほど変わっていないのだなと。この人気曲を聴きながらまず感じたのはそのことだった。そしてjpopの源流は決して歌謡曲ではなくニューミュージックにある、との確証もついでにあらためて得たのだが、つまり、歌詞の舞台となるものの倫理観が違うぞと。毎度くどいようだが、jpopに同じくニューミュージックにも――歌謡曲とは違い――刑務所人生を送るようなひとは先ず登場しなかったですもん(笑)。ですよね?

レイメイ/さユり×MY FIRST STORY(アリオラジャパン)“酸欠少女”を標榜する2015年メジャーデビューのさユり初のコラボ曲。

 さユり×MY FIRST STORY。

 彼女の歌いぶりに椎名林檎が見えた。そしてその奥に中島みゆきの影が見えたのは、俺だけだろうか。

今週の告知「先日ソロアルバム“超冗談だから”出したばかりだけど、今度はハウスユニット“LUNASUN”として新アルバム“Organ Heaven”が12/19に出たよ! 一番の売りは5500字を超える俺のライナーノーツ。読むには買うしかない(笑)」と近田春夫氏。「あと、12/22にはHMV渋谷で年末雑談会やるんで、お暇な方はぜひ!」

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出典元

貴乃花一家離別を招いた河野景子(54)・優一(23)異様な「母子密着」

2018年12月27日号

2018年12月20日 発売

特別定価440円(税込)