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関西の“ナゾの終着駅” 真反対の「網干駅」と「野洲駅」には何がある?

2018/12/24

genre : ライフ, 社会,

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 年末年始は青春18きっぷのシーズンである。18きっぷを握りしめて全国各地の鉄道に乗りまくる正月休みを過ごす人も多いことだろう。で、そんな18きっぷの旅で特にありがたみを感じる列車が「新快速」である。関西を走る新快速ならば、米原から乗ってうとうとしているうちにあっという間に滋賀県を通り過ぎて京都、大阪、三ノ宮、姫路……と駆け抜けてゆくのだ。18きっぷで乗ることのできる列車の中ではいっとう速い列車である。

 と、そんな18きっぱーはもちろんのこと、普段から新快速を使っている人たちなら気になる駅があるはずだ。新快速やそのひとつ格下の「快速」などでしばしば終点の駅となっているあのふたつの駅。そう、網干駅と野洲駅である。というわけで、今回は終着駅の旅 年末年始特別版。関西地方なら外すことのできない二大終着駅であるこの2駅に足を運んでみた。

終着駅の旅。今回の舞台は関西である

■網干駅(JR山陽本線/兵庫県姫路市)

 地元の人や鉄道ファンなら馴染みのある駅だろうが、意外と難読。「あぼし」と読むのだが、どこにあるかというと姫路よりも西である。姫路から先、新快速も快速もすべての列車が各駅停車として走るから、当然に網干駅も全列車が停車する。日中ならば1時間に2~3本ほどの快速が、夜遅くなるとほとんどの新快速も網干行となる。だからJR神戸線や京都線を使っている人も、「網干行」には耳馴染みがあるのではないか。

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 ではそんな網干駅はどんな駅なのか。ご想像の通り、ごく普通の地方の小さな駅である。最近はやりの橋上駅舎(改札口や線路を跨ぐ自由通路が一体となった駅舎がホームの上にあるタイプ)ではあるが、できたてのピカピカではなくてちょっと古い感じが絶妙な“国鉄時代”の香りを誘う。さらに北口に出てみれば、これまたいかにも“昭和”な雑居ビルが建つ。都会の駅前ビルのような華やかな商業ビルではないけれど、これもまた“地方の駅前”感がムンムンなのだ。

JR山陽本線の網干駅。読みは「あぼし」
網干駅の橋上駅舎
網干駅前のビル

駅周辺にあるのは……駐車場

 そしてその周囲は……これでもかってほどに駐車場である。北口の駅前には小さなタクシープールもあって客待ちのタクシーも並んではいるが、駅から出てきた人たちの大半は足早に近くの駐車場へ消えていき、そこからマイカーで去っていく。北口だけでなく、南口にいたっては駅に隣接して立体駐車場まであるほどだ。そしてこれらの駐車場、実に安い。1日停めてもなんと600円。東京のど真ん中だったら1時間も停められない料金で、1日クルマを置きっぱなしにできるのだ。

網干駅前の駐車場
こちらにも駐車場
ちょっと奥まったところにも駐車場がある

「ここでね、朝クルマを停めて会社に行くんです。神戸も大阪も一本で行けるし駐車場だけじゃなくて家賃も安いからね」

 駐車場に急ぐ会社員らしき人に聞いてみたら、こんな答えが返ってきた。なるほど、確かに網干駅から始発電車に乗れば座って快適に通勤もできるし、悪くないのかもしれない。だから駅のあたりは駐車場だらけ。都心の駅前にはお決まりのコンビニやファーストフード店も見当たらないのは、すぐにクルマに乗ってしまうから駅周辺の滞在時間が短いということなのだろう。逆に言えば、駅の周りがちょっと淋しげでもあった。

駅前の自販機で「格安切符」が売られていた
網干駅発、「普通」米原行き