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最近はやりの「野球婚活イベント」に潜入 どんな話がウケるのか?

文春野球コラム ウィンターリーグ2018

2018/12/25
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「婚活」という言葉は既に立派に市民権を得ていて、メディアや日常でも耳にする機会は少なくない。皆様の周りでも婚活イベントや婚活アプリ等がきっかけで出会いを見つけた方が、案外多いのではないだろうか? 

 だが、婚活のことは知っていても「野球婚活って何?」と疑問を感じる方は多いはずだ。野球と婚活。一見、無縁に見える両者だが、組み合わさると実は中々興味深い。以下、野球婚活の歴史と現状について少々語らせていただきたい。

「野球婚活」の先駆けはファイターズ

「婚活」という言葉が世間に定着し始めた2009年、北海道日本ハムファイターズは12球団で先駆けて、札幌ドームで「KONKATSUシート」なる試合観戦型イベントを開催した。これはバックネット裏の一部を「KONKATSUシート」として設定、イベント参加者の男女が隣り合って座り、互いに交流を図るというもので、以後札幌ドームの名物企画として定着。2014年からは二軍の鎌ケ谷スタジアムに舞台を移し、毎年行われている。

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 また、今年は千葉ロッテマリーンズや福岡ソフトバンクホークスが婚活パーティー業界大手のエクシオとコラボし「ベースボールパーティー」なる試合観戦型婚活イベントを開催、多数のカップルが誕生し、好評を博している。

 その他、野球婚活のジャンルとしては、「巨人ファン婚活」といった特定球団のファン限定を謳った婚活イベント、はたまた「バッティングセンターコン」や「キャッチボールコン」といった体験型の個性的な婚活イベントもある。今後、野球婚活がより一層盛り上がるのは間違いないだろう。

「野球婚活イベント」に潜入してみた

 そしてこの度、婚活イベント20連敗中の筆者が、ある「野球婚活イベント」に潜入してみることにした。今回参加するのは「25歳から35歳限定 野球好き婚活イベント!」と銘打たれたイベントだ。ウェブサイトには、このような謳い文句が書かれていた。

「野球ファンの野球ファンによる野球ファンのための婚活イベント!」
「参加者野球ファン率100%!」

 景気のいい言葉が踊っている画面を私は訝しげに眺めていた。だが、この言葉が胸に突き刺さったのだ。

「今まで異性と会話が続かなかった人も大丈夫! 会話に困ることはありません! だってみんな野球好きだから!」

 まるで自分のことを見透かされているようだった。女性との会話に詰まる、言葉が出てこない。今までの婚活イベントで何回も経験してきた。私との会話は盛り上がらなかったのに、他の男性とは楽しそうに話す女性の姿を何回も見てきた。でも今回こそは……。そのとき、野球好き女性、特にベイスターズファン女性との出会いを夢見た私は、すぐさま申込みページを開き、クレジットカード情報を打ち込んだ。

写真はイメージです ©iStock

開始早々、悪目立ちする事態に……

 開催日当日。今回のイベントは横浜にあるチェーンの居酒屋を借り切って行われる。開始時間ギリギリに到着した私は、店内へ。係員による年齢確認等の受付手続きが終わると、奥にある広めの個室へ案内された。長机が縦に並んでいて、それを境界線にして左に男性陣、右に女性陣が座っている。男性が10人、女性が9人。野球をテーマにした婚活とはいえ野球のユニフォームを着用している者は一人もおらず、見る限りワンポイントとしての球団グッズも見当たらない。男性はジャケット、女性はワイシャツといった、一般的な婚活イベントでありがちな服装がほとんど。

 それに引きかえ、私は野球婚活に相応しい服装を心がけていた。普段は球場ですらあまり着ないユニフォームをワイシャツの上から羽織り、首にはタオルマフラーを巻き、おまけにDB.スターマンがデカデカとプリントされた靴下を履いていた。気合を入れた結果が……悪目立ちである。

 とたんに恥ずかしくなって、そそくさと一番奥の座席に座りプロフィールシートを書き始めた。名前、年齢、職業、年収、趣味……項目はありきたりなものばかりで、野球要素はゼロ。悲しいかな、履歴書と同じくらい書き慣れたベーシックなプロフィールシートである。またたく間に記入は終わり、ボールペンを置いた。

 ちょうどそのタイミングで「それではパーティーを開始します! みなさん、元気に挨拶をしましょう!」という司会の一声が響き渡り、パーティーは幕を開けた。今回のパーティーは1対1の回転寿司形式である。目の前の相手と5分ほど会話し、終わったら男性が席を移動、次の相手と会話をする。全員と会話を行ったら、次はカップリング投票に移るというシンプルな形式だ。

「えーと、球団? チームのことですか?」

 最初の女性はAさん。年齢は28歳。歳より見た目は若く、雰囲気だけなら女子大学生のように見える。野球婚活ということもあり、早速聞いてみた。

「Aさんはどこの球団のファンなんですか?」
「えーと、球団? チームのことですか? うーん、特定のチームのファンって感じではないですね……」
「そうなんですね!!」

 全てのチームを平等に見る、まさに博愛主義。そういう見方もありだと思います。続いて別の質問を投げかけてみた。

「好きな選手は誰なんですか?」
「実は私あまり野球詳しくないんですけど……」

 私はゴクリと息を飲んだ。

「やっぱり坂本(勇人)くんかなぁ! 顔が好みなんです!」

 その言葉を聞いて私は、一升瓶をあおるように、グラスに入ったウーロン茶を飲み干した。

 次の女性も似たような感じであり、セ・リーグとパ・リーグの違いを説明しているうちに5分間が終了してしまった。そもそも「野球婚活」という言葉に釣られたのがバカだったのだ。婚活は婚活である。いきなり野球の話を振るなど愚の骨頂。まずはプロフィールを見て相手を知るのが基本である。野村監督のいう「弱者の戦い」、これこそが婚活で一番重要なのだ。今度はいきなり野球の話はしないようにしよう。意を決して次の女性との会話に臨んだ。

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