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さよなら、夕張線 「赤字を出し続けた」ローカル線、最後の旅へ

120年以上の歴史に幕

2019/02/04

genre : ニュース, , 社会

 夕張、と聞いて何を思い浮かべるだろうか。メロンか、それとも財政破綻か。高倉健の映画『幸福の黄色いハンカチ』も夕張が舞台のひとつだ。あと最近では、夕張市長が北海道知事選に出るの出ないの、とニュースにもなっている。

 が、そんな中で忘れてはならないものがある。夕張の町を走る一本の鉄道路線。石勝線夕張支線(夕張線)がこの春に廃止されるのだ。夕張線は、新夕張~夕張間を結ぶわずか16.1kmの短い路線。遠く下流では石狩川に合流する小さな夕張川に沿って、夕張山地を登ってゆくローカル線だ。今回は夕張線の写真とともにその短い路線の最後の旅をしてみたい。

この春に廃止される夕張線(新夕張~夕張間)

学生以外の地元の人を見かけない車内

 夕張線、と言っても現実は石勝線の小さな支線に過ぎない。石勝線は南千歳から夕張山地・日高山脈を抜けて帯広方面までを結んでいる北海道の大動脈だ(新得からは根室本線)。だから石勝線を走る列車のほとんどが特急列車。普通列車は夕張支線に乗り入れるものが1日に5往復走っているだけだ。

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 新夕張駅を出た夕張行きの普通列車は、遥か頭上高くの高架で駆け抜ける特急と別れて北へ進路を変える。蛇行する夕張川を渡って、少し走れば最初の駅、沼ノ沢。駅と言っても、周りに大きな市街地があるわけでもなく、昔からの炭鉱住宅の名残のような民家が立ち並んでいるばかりだ。

 そのままさらに列車は北へ。2つ目の駅は南清水沢。駅前には夕張高校があって、車内には通学で使う高校生の姿も。もうすぐ夕張線、なくなってしまいますね?

「そっすね。でも俺もう卒業なんで関係ないっす」

 悲しいほどにあっさりしたものである。学生以外の地元の人の姿は車内ではほとんど見かけない。夕張の人口がめっきり少なくなったというだけではなくて、1日5往復だけの鉄道などクルマ社会の北海道ではほとんど誰も使わないのだろう。廃線後には南清水沢の駅近くに都市拠点施設ができて交通結節点としての機能も持つのだとか。通学の学生やクルマを使わない高齢者のための便はある程度確保されるのだろう。

石狩川の支流、夕張川を渡る