昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

言ってはいけない!「日本人の3分の1は日本語が読めない」

2019/02/16

 OECDによる国際調査で「先進国の成人の半分が簡単な文章を読めない」という衝撃の結果が明らかになった。人間社会のタブーを暴いた『もっと言ってはいけない』の著者が知能格差が経済格差に直結する知識社会が、いま直面しつつある危機に警鐘を鳴らす。

◆◆◆

「国際成人力調査」の結果概要

(1)日本人のおよそ3分の1は日本語が読めない。

(2)日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。

(3)パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない。

(4)65歳以下の日本の労働力人口のうち、3人に1人がそもそもパソコンを使えない。

 ほとんどのひとは、これをなにかの冗談だと思うだろう。だが、これは事実(ファクト)だ。

 先進国の学習到達度調査PISA(ピサ)はその順位が大きく報じられることもあってよく知られているが、PIAAC(ピアック)はその大人版で、16歳から65歳の成人を対象として、仕事に必要な「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力(ITスキル)」を測定する国際調査だ。OECD(経済協力開発機構)加盟の先進国を中心に24カ国・地域の約15万7000人を対象に実施され、日本では「国際成人力調査」として2013年にその結果の概要がまとめられた。

©AFLO

失業の背景を調査

 ヨーロッパでは若者を中心に高い失業率が問題になっているが、その一方で経営者からは、「どれだけ募集しても必要なスキルをもつ人材が見つからない」との声が寄せられていた。プログラマーを募集したのに、初歩的なプログラミングの知識すらない志望者しかいなかったら採用のしようがない。そこで、失業の背景には仕事とスキルのミスマッチがあるのではないかということになり、実際に調べてみたのだ。

 読解力と数的思考力はレベル1からレベル5で評価され、ホワイトカラーの仕事(専門職)にはレベル4以上が必要とされている。

 実際の問題は公開されていないが、問題例が紹介されているので、どのようなものか具体的に見てみよう。

 

誤答率27.7% レベル3の読解力の問題

 レベル3の読解力の問題では、図書館のホームページにある本のリストから『エコ神話』の著者を答える(図1)。「子どもだましでバカバカしい」と思うだろうが、驚くべきことに、このレベルの問題に正答できない成人が27.7%いる。

 それぞれの本には150字程度の概要が書かれている。レベル4では、「遺伝子組み換え食品に賛成の主張と反対の主張のいずれも信頼できないと主張しているのはどの本ですか」と質問される。短文を読むだけの問題だが、8割ちかい(76.3%)成人がこのレベルの読解力を持っていない。

簡単な問題文が読めない子供たち

 AI(人工知能)に東大の入学試験を受けさせる「東ロボくん」で知られる新井紀子氏は、全国2万5000人の中高生の基礎的読解力を調査し、3人に1人がかんたんな問題文が読めないことを示して日本社会に衝撃を与えた(『AIvs.教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社)。

 一般にはこの結果は「日本の教育が劣化した」と受け取られているが、PIAACのデータはそれが誤解であることをはっきり示している。

 日本の成人のおよそ3人に1人が、本のタイトルと著者名を一致させることができない。なぜこんなことになるかというと、なにを問われているかが理解できないからだろう。

 日本人の3割は、むかしから「教科書が読めない子どもたち」だった。そんな中高生が長じて「日本語が読めない大人」になるのは当然なのだ。