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連載近田春夫の考えるヒット

みやかわくんと美波のふたり "超若手”はとにかく歌詞がすごい――近田春夫の考えるヒット

2019/02/27

『略奪』(みやかわくん)/『カワキヲアメク』(美波)

絵=安斎肇

 次回は、超若手二組! では如何でしょうか、と担当の若者からメールが入っていた。俺はその“超若手”というコトバに惹かれ、それは是非聴いてみたいものだと。取り寄せてもらうと、美波21歳、みやかわくん22歳であった。

 申し訳ない。どちらの存在もまったく知らなかった……。って、そりゃそうよ。俺なんて君達の三倍は生きてきちゃってるんだから! 子供どころか、下手すりゃもう孫の年回りじゃんさねぇ(笑)。

 いや、しかし。それはともかく、こうして毎週色々な新譜を聴こうとも、俺は世代の違いに衝撃を受けたりすることなどまずなかった。その私が、今回否応無しに思い知らされるところのあったのは、まぎれもない事実である。いや、歌詞がすごかったのだ。

 といって表現内容やスキルのことではないです。量よ、量。とにかくどちらも読む気も起こらないほどの字数なのだ。ま、美波のほうは――あえて申せば――そこまでではないかもしれないが、みやかわくんだ。検索すれば歌詞は見つかる筈なので、好奇心がおありなら、是非チェックなどしてみてくださいませね。

略奪/みやかわくん(ユニバーサル)動画サイトで人気を集め2018年にデビュー。本曲はぼくのりりっくのぼうよみ氏との共作がポイント。

 少し話がそれるが、わたくしごとで申し訳ない。実は来週の28日にライブをやる、その席で初お披露目をせんと、先般リリースしたソロアルバムの楽曲を、今必死になって覚えている真っ最中なのだが、困ったことに歌詞がなかなかアタマに入ってこないのである。てぇことで、若干焦ってもいる今日この頃。

『略奪』の映像を観ていたらみやかわくん、超ボリューミーな歌詞を、いとも易々と――しかも相当な早口で――歌いきってみせているのには、まいったまいった。

 要するに、この気が遠くなるほどの長尺を、キッチリと覚えることが出来ているという話である。正直、今の俺にはこれは無理だワ。やっぱ寄る年波ってのはあるのかもね、それは謙虚に認めなけりゃいかんのかいなと。

 それはそうと、美波にしても、本質的に事情はきっと同じだと思うのだが、こうした意味で大変!な歌詞というのは、たとえば彼等のファンにはどうなのだろう? 何度か聴けば、もう簡単に口ずさめたりしてしまうものなのか。

カワキヲアメク/美波(フライングドッグ)作詞作曲:美波 2017年からミニアルバムなど出しているものの、本曲がメジャーデビューシングル。

 聞くところによれば、昨今はかつてほど“カラオケ”も盛んではないらしいので、そのあたりの心配は、もはや無用なのかもしれないが……。

 いずれにせよ、この二組の超若手のコトバが、世代的傾向をあらわしているのだとするなら、共通するのは、歌詞に於いて“つながり”をさほど重視していない、いい換えると、一行ごとに完結する世界の羅列になっている。そこに“文章的な流れ”のあまり感じられぬことであろう。

 そうしたスタイルの詞作には、ストーリー性やドラマツルギーというものがどうしても欠けてしまうきらいはある。

 そのあたりはきっと今の若い子たちには、さほど重要なことでもないのだろうなぁと。そんなことも思った次第だ。

今週の告知「本文でも書いたけど、今月28日(木)、オレのベストアルバム『世界で一番いけない男』発売を記念して渋谷区道玄坂のLIVING ROOM CAFEでライブをやるよ。できれば『超冗談だから』収録曲を全部やりたいんだよね」と近田春夫氏。「昔から歌詞カード見て演奏するのをバカにしてきたので、いま覚えるのに必死です(笑)」

出典元

驕れる安倍晋三のフェイクを撃つ

2019年2月28日号

2019年2月21日 発売

定価420円(税込)