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連載僕が夫に出会うまで

ゲイの僕の初恋は「脇毛」から始まった

親友が突如ワイシャツを脱ぎ始め……――僕が夫に出会うまで #5

2019/02/28
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書籍「僕が夫に出会うまで

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。

幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京、カミングアウト……。僕が夫に出会うまでを振り返り、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴った「僕が夫に出会うまで」が現在発売中です。

 

文春オンラインでは中学時代まで(#1#9)と、母親へのカミングアウト(#28#30)を特別公開中。

 

自分がゲイであることを認めた瞬間から,彼の人生は大きく動いていきます。さまざまな出会いや別れ、喜び、悲しみ、怒り──幾多の困難を乗り越えて、生涯のパートナーに出会い、そして二人は大きな決断を下す。

 

物語の続きは、ぜひ書籍でお楽しみください。

「脇毛なんて、まだ生えてないよ!」

放課後の生徒会室に僕の声が響いた。僕と司の2人きりで、なぜか「毛」の話になっていた。

 

親友が突如ワイシャツを脱ぎ始め……

「え! 七崎、まだ脇毛生えてないの? もう中2なのに!」

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 脇毛が生えていないことを驚かれたことに、驚いてしまった。みんな、いつの間に脇毛なんて生えたのだろうと考えていると、「まじかよ! ちょっと待って」と言いながら、司は自分のワイシャツのボタンを外し始めた。白いワイシャツから露になった司の上半身は、健康的に焼けた肌と、うっすら付いた筋肉が「男性らしさ」を感じさせた。

「ほら」と、恥ずかしがる様子もなく、司は脇毛を僕に見せつけている。見て良いものなのか、僕の方が恥ずかしく感じたが、ここで僕が照れるのはおかしい。できるだけ堂々と見るように心がけなくてはいけない。目の前には司のきれいな肉体と、きれいに生え揃った司の脇毛。

 それを見たとき、僕の中で、カミナリに打たれたかのような、抑えがたい猛列な欲求が、体中を駆け巡り、戦慄を覚えた。

 司の肉体をもっと間近で見たい、色黒でキメ細かな肌に触ってみたい。正直にいうと、司の脇に顔を挟まれたいとまで思った。こんな感覚は生まれて初めてだ。心臓の音が、2人きりの生徒会室中に響いてしまってはいないかと心配になった。そして、司の肉体美を目の前にして僕は、この後、どう行動していいのかが、分からなくなってしまったのだ。

「落ち着け……。『ふつうの男子』ならば、こんな状況で、どう行動するだろうか……」

直感が「お前も脱いどけ!」と言った

 考えた結果、僕は急いで自分のワイシャツのボタンを外した。これが正しい行動なのかはわからない。ただ、僕の直感が「お前も脱いどけ!」と言った気がした。

「ほら」

 僕はワイシャツを広げ、司に脇を見せた。他人に自分の脇を見せるのは初めてだが、今は恥ずかしがっている場合ではない。

「ほんとだ、すげー! 七崎、チン毛は、生えてるんだよね?」

 司の言葉が、すごく恥ずかしくて、照れくさくて、司の目を見ることが出来なかった。チン毛も見せろと言われたらどうするべきかを考えると、もじもじしてしまった。

「少しだけね」

「そうなの? これから七崎の脇毛も生えてくるのかな? それか、七崎はやっぱり半分女性なのかもしれないね!」

 司は納得したようにそう言った。

 

「これから生えてきたらいいな、脇毛。司みたいに! だってかっこいいもん! 司の脇毛、すごくかっこいい!」

 自分に脇毛が欲しいというのは嘘だったが、司の脇毛に魅了されたのは事実だった。まだ心臓の鼓動が激しいせいか、僕は司の脇毛を褒め称え続けた。