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連載「イラク水滸伝」外伝

辺境作家がバグダードで驚いた、「イラクのメシがうますぎる」問題

「イラク水滸伝」外伝――第1回:知られざるグルメ大国

2019/03/04

イラクの人気家庭料理「ドルマ」

タマネギに肉などを詰めて蒸し焼きにした「ドルマ」

 イラク人に「どの料理がいちばん好き?」と訊くと、「ドルマ」と答える人が多い。それくらいイラクの代表的な家庭料理だ。

 ドルマは中東から地中海沿岸部にかけて広く食べられている。ナスやピーマン、パプリカの中に米や肉を詰め込んで蒸し焼きにした料理だが、イラクのものはこれまた一味ちがう。まず、最もよく使われる野菜がタマネギであること。タマネギの中に何かを詰めるという発想自体が風変わりだ。

 私たちは友人であり(いつの間にか)探索隊のメンバーにもなっていた、バグダードのハイダル君宅で御馳走になった。鍋にぎっしり詰めて蒸し焼きにし、食べるときは鍋をひっくり返して皿にあける。肉やタマネギの汁をたっぷり吸ったドルマはとてもジューシー。手がかかりすぎるせいか、レストランや食堂ではあまり置いてないらしい。

すごい迫力の「マクルーベ」

 羊肉、トマト、ナス、米、シャーリー(「髪」の意味、細いショートパスタ)を炒め煮し、最後に鍋ごとひっくり返したもの。イラク料理はどれも一品の迫力がすごい。

「マクルーベ」と著者・高野秀行氏

ヒッカーケ(おこげ)

日本食にもある「おこげ」は絶妙な固さ

 ティグリス=ユーフラテス川の恩恵を受けているイラクでは、米もよく食べられている。面白いことに「おこげ」(イラクの言葉で「ヒッカーケ」)も人気。

 お世話になったハイダル君宅で「ヒッカーケが食べたい」とリクエストしたら豆のシチューと一緒に出してくれた。黒焦げではなく、少しパリッとしたぐらいの絶妙な固さ。濃厚な豆シチューともよく合い、おこげのハヤシライスのようだった。