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連載テレビ健康診断

地味で華がないのに、なぜか見入ってしまう刑事ドラマ――青木るえか「テレビ健康診断」

『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』(テレビ東京系)

2019/03/03

 捜査中の事故で下半身不随となった刑事は、その人知を超えた記憶力・推理力によって犯罪者を追い詰める……と聞くとどんなサイコ・サスペンスか、『鬼警部アイアンサイド』か『おしどり右京捕物車』か、頓狂なトンデモドラマか、と思うのだが見てみるとこれがぜんぜんそんなことはない『記憶捜査~新宿東署事件ファイル~』。

 ジミ。画面に華がない。これは悪口ではなくて、今どきのテレビドラマの「華」って、わかりやすいサイコパスがカッコつけて登場したり、J-POPが無関係に鳴り響いたり、超未来っぽいオフィスあるいは大正ロマンみたいな事務所が舞台とか、大人気の俳優(星野源クラス)が出るとか、そういうものがフラッシュライトのように画面に炸裂する。それが「華」。そういうのが鬱陶しくてしょうがなかったが、『記憶捜査』にそんなものはない。

 なんというか、再現フィルムっぽいんです。

 警察ドラマだから事件が起きる。その事件も派手さはなく、人は死ぬものの、原因は社会性のあるジミなもの。ベトナム人実習生のノービザ問題、老人を騙して無駄な商品売りつける銀行員(その行員もノルマに苦しんでる)……どうですこの地に足のつきっぷりは。

 そして、見入ってしまうんですな、この華のない、地に足のついたドラマに。再現フィルムっぽさが、見る者を事件の中にスッと入り込ませる、というのもあるし、出てる俳優も良いような気がする。ジミながら魅せる役者たち。銀行員に半ばわかっていて騙されてやる一人暮らしの老女の役を岩本多代(ますよ)がやってたが(←調べました)、この寂しい身ぎれいな老女と息子のような銀行員の、温かく哀しい交流みたいなものが、すごく実感伴ってるの。