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虐待サバイバーが語る「児童相談所は私を助けてくれなかった」

「虐待のニュースは自分の心が死んじゃうので……」

2019/03/05
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 今年1月24日、千葉県野田市の小学4年、栗原心愛さん(10)が自宅で死亡した。父親の勇一郎容疑者(41)と母親のなぎさ容疑者(32)が傷害容疑で逮捕された。この事件では、柏児童相談所の不適切な対応が問題となっている。

 柏児相は心愛さんを一時保護していたが、一時保護を解除して預けていた親族宅から自宅に戻すかどうか判断する際、父親から「お父さんに叩かれたのは嘘」などと書かれた手紙を見せられた。しかし真偽については十分に確かめず、自宅に戻した。市が合同委員会を設置。再発防止策を検討することになっている。

 児相のあり方が問われる中、過去に両親から虐待され、児相と関わった2人に話を聞くことができた。

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©iStock.com

「死ぬならここにしようと決めている」

 今年2月某日、明穂(27、仮名)から無料通信アプリLINEのメッセージが届いた。

「死にたいと思って、気がついたら更地にいた。震災前、ここには児童相談所があった。死ぬならここにしようと決めている」

 東日本大震災9年目の取材で筆者は被災地にいた。そのことをツイッターで知ったという。さっそく連絡を取り、会うことにした。明穂の自宅は津波被災をしたため、一旦、仮設住宅に住んだ。現在、実家は建て替えた。

 明穂はよく父親からこう言われて、体罰を受けながら育った。

“なぜ叩かれたのか。理由を探しなさい”

100点を取っても、「こんな簡単なテストで喜ぶな」

自殺を考えている明穂。気がついたら児相跡に立っていたという ©渋井哲也

 例えば、幼いころは親戚に挨拶をするタイミングが遅いという理由だったり、小学生のときは成績が理由だったりした。100点以外は許さないが、100点を取っても、「こんな簡単なテストで喜ぶな」と言われた。そのためか、小1の頃から自殺を考えていたという。

「1年のころは飛び降りれば死ねると思って、自宅の2階から飛び降りたことがあった。2年のときからはリストカットをしたり、頭をぶつけるようになった」

 勉強するモチベーションが上がらず、5年の頃には100点を取れなくなっていた。

「友達を家に呼ぶと、父は『君はどこの大学に行くの?』と聞き、答えられないと家にあげなかった。次第に友達が来なくなった。でも、授業参観にも父親がくるので、熱心に思われていた」