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連載僕が夫に出会うまで

キューピッド役だったはずの高校生の僕は、恋するゲイ少年となった

サッカー選手にいそうなイケメンの彼にアドレスを聞かれ……僕が夫に出会うまで #11

2019/03/21

 津田っちの態度は少しよそよそしかった。ハセもそれを感じとったのか、硬直していた。

「あの、はい。 ……動物園。よろしく、お願い、します」

 ハセはやっぱり、うまく喋れないようだった。そんなハセがすごく可愛く思えた。教室に戻ると僕は津田っちに言った。

「ハセってかっこよくない?」

「えー、私のタイプじゃなかった~。だって、あの人の喋り方こんなんだったよ?」

 津田っちは、ハセのしゃべり方を真似て笑った。

「ハセは緊張してたんだよ。僕と喋ってた時は普通だったよ。動物園楽しみだね!」

 

「なんで勝手に言っちゃうんだよ!」ハセは僕の身体をブンブンと

 動物園当日、僕は最初から最後まで本当に楽しむことができた。一緒に行ったメンバーはともかく、ハセが四六時中カッコよかったからだ。ただ、ハセと津田っちはたまに会話をしていたが、二人はその先なんの盛り上がりもなく一日が終わってしまったようだ。ハセと僕が二人きりになった帰り道、ハセは言った。

「今日津田さんとうまく喋れなかったのは、七崎が勝手に、俺が津田さんを好きなことを伝えてしまったからだよ。なんで勝手に言っちゃうんだよ!」

 ハセは僕の身体をブンブン揺さぶった。僕は悪いことをしたつもりは全くない。「ドンマイ!」と彼を励ました。僕が津田っちに話をしていようがいなかろうが、ハセがうまく喋れようが無かろうが、うまくいかないものはうまくいかないのだ。僕は直感でわかっていた。そんなことよりも、僕はハセと仲良くなれたことが、嬉しくて仕方がなかった。

 それから、僕とハセはいつも二人でいるような仲になったから、周りからは「あいつらデキてるんじゃないか」と噂されたくらいだった。もちろん噂通りではないが、気がつけば僕は、ハセのことしか見えなくなっていた。

(続き「ハセとの拷問温泉」を読む)
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写真=平松市聖/文藝春秋