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なぜ日本最難関の東大医学部が、医師国家試験で合格率「55位」なのか

医学を学び続けるモチベーションを保てない高偏差値の人たち

鳥集 徹 2019/03/25

国試合格率は、医師になるモチベーションのあらわれ?

 合格率2位は「順天堂大学」(98.4%)、3位は「横浜市立大学」(97.7%)でした。順天大は前年4位、横浜市大は前年2位。この2校に限らず、ランキング上位にはだいたい毎年同じような顔ぶれの大学が並びます。

 

 医学部の教員の中には「国試合格率が高い大学は、国試対策の授業ばかりやっていて、まるで国試予備校だ」と批判する人もいます。実際、「国試と同じ形式で進級試験をつくるよう大学から言われる」という医学部教員の話も聞いたことがあります。

 もちろん、そのような面もあると思いますが、国試合格率が高いのは、やはり学生がモチベーションを落とさず、まじめに勉強した結果だと言えるのではないでしょうか。それに合格率の高い大学出身の医師には、自治医大と同様に臨床医として優れた人が多い印象があります。ですから、その点は素直に評価していいのではないかと私は思っています。

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©文藝春秋

ワースト3の合格率は……

 一方、名誉のためにあえて名前は出しませんが、もっとも合格率が低かった大学は71.9%と、受験者10人のうち3人が落ちる成績でした。ワースト2位、ワースト3位も合格率は80%に届きませんでした。

 実は、下位にも毎年、同じような顔ぶれの大学が並びます。とくに70年代に設立された私立大学の名前が目立つのは否めません。これらの大学の中には、かつて「お金さえ積めば入れる」と揶揄され、金権入試が問題となった大学もあります(東京医大の事件があったので、「かつて」とは言えないかもしれませんが……)。

 医学部人気が高まったおかげで、こうした大学の偏差値も上昇して、今では早稲田や慶應の理系学部に匹敵する難関となっています。ですから、一般の大学に比べると学力の高い学生が集まっているのは間違いありません。それでも国試合格率がふるわないのは、むかしからの体質をいまだに引きずって、勉強し続けるモチベーションを保ちにくい雰囲気が残っているのかもしれません。