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連載僕が夫に出会うまで

「ダブルでご予約されていますが」好きな男の子との東京旅行で、ツインベッドに通された僕は……

僕が夫に出会うまで #17

2019/04/04

連載「僕が夫に出会うまで」

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京……僕が夫に出会うまで、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴るエッセイ。毎週連載。

 

(前回までのあらすじ)高校生の僕は、同級生で親友の男の子、ハセに恋心を抱いてしまう。同じ健康ランドで働くハセの恋人「マミちゃん」に嫉妬を燃やす僕を、「ずっと童貞でいいのか」とハセは心配していた。

 

(前回の記事「『ずっと童貞のままでいいのか!』好きな男の子に肩を揺さぶられたゲイ少年の気持ちとは」を読む)

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好きな男の子と東京へ

 高3に入ると卒業後の進路をどうするかを考えなくてはならなかった。僕は映画や海外ドラマが大好きだったので、その道に進みたいと考えていた。校内でタバコが見つかり、数週間の停学中に僕は映画や海外ドラマを観まくっていた。その時は、不謹慎だがとても幸せな気分だった。

 東京にある映画専門学校をみつけ、一度見学に行くことにした。その話をハセにすると「俺も行ってみたい!」というので、夏に学校見学を兼ねた、生まれて初めての東京旅行が決定した。

 新千歳空港のゲートをくぐり、降り立つ先は羽田空港。飛行機から降りるとモワッと湿気た暑さを感じた。

©平松市聖/文藝春秋

梅雨にモノレール、ファミリーマート……初体験だらけの東京

「これが梅雨ってやつだぜ!」

 ハセもテンションが高かった。

「梅雨だ! いぇーい!」

 北海道には梅雨がないから、僕らにとって、梅雨の初体験だった。そしてモノレールに乗った。

「モノレールだぜ! いぇーい!」

 モノレールからは、狭そうに建ち並ぶ、たくさんのビルが見えた。東京で見るもの全てが目新しかった。瓦屋根のお家を見るのも初めてだったし、竹が生えてるのも初めて見た。そして、ファミリーマートも(今では北海道にもあるのだが)。「ファミマだ! いぇーい!」とコンビニの前で記念撮影をしているのは僕らくらいだ。

 中でも一番驚いたのは、普通の公園に植えてあるヤシの木だ。これまでヤシの木って奴は、南国にしかない木だと思っていたのに、東京ではこんなちっぽけな公園にもヤシの木が植えてあるなんて! 日本の景色には決してマッチしていないと思ったが、僕たちはヤシの木に抱きついて交互に写真を撮った。