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韓国人の口に合わないと言われた日本のラーメンが、ソウルでブームの理由

辛いもの好きでも、スープにパンチを求めない文化

2019/04/05

 ここ数年、ソウルでラーメン屋をよく見かけるようになった。

 2011年、博多の豚骨ラーメンの雄「一風堂」がソウルに出店し、これで韓国でも日本のラーメンが食べられると喜んだのも束の間、5年後には撤退。その背景を巡っては、「ライセンス料の問題」や「味は同じでも一風堂らしさがなかった」、「脂っこい本格的な日本のラーメンの味は韓国人に親しみがなかった」などさまざまに言われたが、漠然と、「あの一風堂でもだめだったのだから、やはり日本のラーメンは韓国の人の口に合わないんだ」、そう思った。だから、今になってラーメン屋が増えているのは正直、意外だった。

 ある在来市場近くの裏通りにもラーメン屋がぽつんとできていて、期待もせずに入ったら、これがおいしくて驚いた。

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一見、カフェのような外観の「いちはる」2号店(著者提供)

韓国・弘大で一番おいしいラーメン「豚人」

「いちはる」というその店の店主は日本からの進出組で、ソウルに店を開いて3年ほど。「うちはまだまだ」とかぶりを振りながら、日本からの進出組で勢いがあるのは「豚人(ぶたんちゅ)」で、そこから麺も仕入れていると言う。

「豚人」はソウル市内に5店舗を展開する“強者”だ。勢いがあるというその1号店にさっそく行ってみた。

 1号店の弘大店は、美術系の弘益大学の地下鉄駅近く。若者の街として知られ、無数の飲食店や服飾店などがぎちぎちに並ぶこの界隈は、ネットで検索しただけでもおよそ80店舗近くのラーメン屋の名があがる、ソウルのラーメン激戦区だ。

 週末の昼前に到着するとすでに満席で外には人が待っていた。ほどなく店員が出てきてメニューを渡しながら説明をしてくれる。ラーメンは4種類。ラーメンを選んだ後は、麺の種類(3種類ある)やスープの濃淡、トッピング量が選択できるという。

 前に来ていた二人組は慣れた口ぶりであっという間に注文。大学生で月に3、4度は来る常連だといい、「スープの濃さも選べるし、値段も7500ウォン(約750円)で他よりも安いし、しかも替え玉もタダ(平日の17時までのサービス)。おいしいし、サービスもいいから、来ちゃいますよね」と話していた。

 塩豚骨に縮れ麺、スープの濃淡は普通にし、ニンニクは入れずに食べたが、スープはあっさりしながらも豚骨がしっかり利いていて、麺もこしがあって、本当においしかった。

「豚人」の塩豚骨ラーメン。7500ウォン(約750円)で、替え玉無料はうれしい

「豚人」は弘大店を2012年9月にオープンさせた後、大学街に店舗を増やし、2014年には鳴り物入りでお披露目されたロッテワールドモールにも出店。ロッテ広報に聞くと、「弘大で一番おいしい(ラーメン)店に出店を要請した」という。2015年の日韓国交正常化50周年の記念行事でもその腕を振るった。