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連載僕が夫に出会うまで

「お役目があって生まれてきたのだから」美輪明宏さんの言葉に救われたゲイの僕が、自分の前世に同情した日

僕が夫に出会うまで #19

2019/04/11

連載「僕が夫に出会うまで」

 

2016年10月10日に、僕、七崎良輔は夫と結婚式を挙げた。幼少期のイジメ、中学時代の初恋、高校時代の失恋と上京……僕が夫に出会うまで、何を考え、何を感じて生きてきたのかを綴るエッセイ。毎週連載。

 

(前回までのあらすじ)中学生時代、いじめに悩んでいた僕は、高校ではクラスの男子のヒザに座って昼休みを過ごすほど、友だちがたくさんできた。卒業も近づいてきて、みんなと離れてしまうことを寂しく思いながらも、「東京が僕を呼んでいる!」と自分を奮い立たせるのだった。

 

(前回の記事「ゲイの高校生の僕が、クラス中の男子のヒザを制覇していた話」を読む)

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自分の「お役目」を知りたかった

 東京へ旅立つ数ヶ月前。当時は「スピリチュアル」がブームだった。僕も、本やTVで見ていたので、自分のオーラの色や前世を知りたいと思っていた。

 読んだ本の中で、美輪明宏さんの「みんなお役目があって生まれてきたのだから、自ら命を絶つことはいけません」というような言葉には、何度命を救われたかわからない。だからこそ僕は、自分の「お役目」を知りたかったのだ。

「なんのために生まれて なにをして生きるのか」「わからないままおわる そんなのはいやだ!」(「アンパンマンのマーチ」(作詞:やなせたかし 作曲:三木たかし)より)

やなせたかし先生のおっしゃる通りだと思っていた。

©平松市聖/文藝春秋

 そんな時、バイト先の健康ランドで、マッサージのお仕事をしているおばちゃんが休憩室でこんな話をしていた。

「私のオーラは紫なんだって! ヒーラーとか、人を癒す仕事の人に多いらしくて、すごく当たってると思った!」

 僕はすかさず話に入っていった。

「おばちゃん! 僕もオーラとか前世とか視てもらいたいんだけど、誰に視てもらったの?」

「すごい先生がいらっしゃるから、今度の休みに紹介してあげるわ。一緒にいきましょう!」

 カウンセリング当日、その先生のお店にはスピリチュアル系主婦がたくさん集まっていて、健康に良さそうなお茶を「これはすごいパワーだ」とか、そんな話をして飲んで、賑わっていた。

 僕だけ学ランで、たくさんの主婦に囲まれているのも気後れしたし、お茶にパワーは感じない。「お茶のパワーって、カテキン? そんなにすごい葉っぱなら、そのまま喰えばいいのに……」とか思いつつ、場違いながら良い子にして座っていた。主婦の方々はとても親切にしてくれたし、僕もお上品にお茶をいただいていた。すると、誰かのカウンセリングを終えた先生が、茶飲みの輪の中に入ってきた。にこやかにみんなと会話をしていた先生だったが、僕と目が合うと目を丸くさせて言った。