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「今すぐ金のあるところまで案内しろ!」

 夫婦が玄関の施錠を解いた瞬間、3人の男たちが押し入り、夫婦の両手を結束バンドで緊縛。男たちは妻にこう命じたという。

「今すぐ金のあるところまで案内しろ!」

 前出の社会部記者が解説する。

「この家は、80代の夫と70代の妻の2人暮らし。犯行グループは現金約400万円を強奪し、逃走しました。夫婦の身体は紐状のもので縛られていましたが、自力で解いた妻が約20分後、『強盗に遭った』と110番通報した。3人組の一人は黒色ズボンに黒色ジャンパー、目出し帽を被っており、一人は同じく黒色ズボンにグレーのジャンパーを羽織っていたといいます」

 警視庁は江東区の事件と同一グループの犯行と判断。

「江東区の事件では被害者の加藤さんが、事件数日前に資産状況などを尋ねる不審な電話が自宅にかかってきたことを周囲に語っている。これは、振り込め詐欺集団が事前調査で行う例が多い“アポ電”と言われる犯行予兆電話。笹塚の事件でも同様のアポ電がありました」(前出・捜査関係者)

最近は1日約100万件のアポ電被害の通報が

個人情報を熟知した「アポ電」の中身

 笹塚の夫婦の自宅に「俺なんだけど」と、息子を名乗る男から電話があったのは、事件2日前の朝。電話に出た妻に対し、“息子”はこう切り出したという。

「ちょっと相談があるんだけど。患者さんの治療方法を間違えちゃって、その患者が別の大学病院に行くっていうんで治療代を出さなきゃいけないんだ。いま、家にいくらあるかな?」

 前出の捜査関係者が笹塚の事件について説明する。

「犯行グループはターゲットの個人情報を熟知していました。実際に夫婦の息子は歯科医なのです。しかし、実家から徒歩数分のところにクリニックを構えており、日常的に接することが多かったため夫婦は疑念を抱いたそうです。ところが、当日は警察官を装って侵入するという荒っぽい手口で、被害に遭ってしまった」

 警視庁によると、アポ電がかかってきたという通報は、昨年1年間で約3万4000件に上る。警視庁犯罪抑止対策本部の担当者が語る。

「ここ数年、アポ電は年間1万件のペースで増えています。今の主流は電話転送サービスを悪用する手口で、固定電話機や携帯電話からの発信をインターネット上で電話転送し、被害者の電話に別の03番号等を着信表示させるというもの。現在、警察庁を通じて対策強化を働きかけています」