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連載『めちゃイケ』、その青春の光と影

「最高33.2%、最低4.5%」『めちゃイケ』歴代視聴率のエグい振り幅――フジ片岡飛鳥の告白

フジテレビ・片岡飛鳥 独占ロングインタビュー#10

 フジテレビ・チーフゼネラルプロデューサー片岡飛鳥氏のロングインタビュー第10回。今回も人気のテレビっ子ライター・てれびのスキマさんがじっくり聞きます。(全11回の10回目/#1#2#3#4#5#6#7#8#9#11公開中)

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「視聴率を獲らなければテレビじゃない」だったら『チコちゃん』も『池の水』も生まれてない

<「楽しくなければテレビじゃない」というフジテレビ80年代のキャッチフレーズ(→#2)をDNAとして受け継いだ『めちゃイケ』はクレームとの戦いの歴史だった側面もある。常に「子供に見せたくない番組」の上位に挙げられていたりもした。>

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 ここからはあくまで僕個人の考えですけど、どんなに時代が、とか、どんなにスポンサーが、コンプライアンスがって言われても、自分たちが面白いと思うものっていうのは簡単には変えられないんですよね。もちろん、長い歴史の中ではクレームもたくさんあるし、大人なのにびっくりするくらい怒られたこともあるけど(笑)、そのときは「自分たちが面白いと思うことを表現したつもりが、“突き抜けなかった”」と反省するようにしていました。“突き抜けなかった”、イコール面白さが足りなかった、イコールあまり笑えなかった、イコール後味がよくなかった、みたいな。

フジテレビ・チーフゼネラルプロデューサー片岡飛鳥氏

 逆に“突き抜ける”というのはどんな感覚か、ですか?……さっきも言いましたけど、僕自身は番組というのは作り手の価値観から始まるべきだと考えています(→#7)。まずはディレクターの見方とか考え方で「こういうことが面白いと思う」っていうのが投影され、そこに演者やスタッフが共鳴しあって、思いっきり世にぶつけていく。うまくいけばそのオリジナリティが見た人の記憶に残り、うまくいけば「面白かったから次も見よう」という気持ちにつながっていく、みたいなイメージですかね。その“突き抜ける”感じがないと、他の人が作る番組と何がどう違うんだってことになってしまう。

 だから「楽しくなければテレビじゃない」というフレーズを過去のものとして、あまりに軽視するのもどうかと……。というのも、もしその「楽しく」の部分をサボって、「視聴率を獲らなければテレビじゃない」という考え方から番組を作り始めたら、たとえば『チコちゃんに叱られる!』も『池の水ぜんぶ抜く(大作戦)』も生まれてないと思うんですよ。きっとどうすれば視聴率を獲れるかよりも、どうすれば面白くなるかが先にあったはず。もっと細かく言えば「どうすれば自分たちが面白がっていることが“突き抜けて”、たくさんの人にも面白がってもらえるか」と。小松(純也 ※1)がチコちゃんの動きひとつでも「違う!もっとこう!こう面白く!」って自分でやって見せてるのが目に浮かぶ(笑)。

 そういう時間をかけながら、『チコちゃん』も『池の水』もNHKやテレビ東京のひとつのブランドとして認知されていく。それは作ってる側のものの見方や考え方、オリジナリティ溢れる価値観が前面に出ているからこそだと思うんです。『水曜日のダウンタウン』だって決して高視聴率ではないのかもしれないけど、ディレクターの独特な目線を見せてくるから、他局のどの番組とも違うブランド性を感じますよね。きっとそこにはファンが生まれる。ただ、より強く“突き抜けよう”とする感性には、反動のクレームもあると思います。