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とにかく多い予期せぬトラブル

―― すると、大変なカットは受け手を見つけるのが難しそうですね。

 Aさん 私たちは「作画カロリー」が高い、低いと呼んでいますね。営業の際には「お好きなシーンを選んでください」と言いますので、結果的に作画カロリーが高いカットは売れ残ることが多いです。なんとか単価を上げたり、1パート当たりのカット数を少なくしたりして、誰かに描いてもらうわけですが。

 その後は、まず原画マンに下書き(ラフ)にあたるL/O(レイアウト)を描いてもらいます。これを私たちが回収して演出、監督、作監(作画監督)、総作監(総作画監督)の順でチェックしてもらいます。それぞれが「このキャラクターの向きが……」とか「表情をもうちょっと変えて……」と修正指示を出して、どんどんブラッシュアップしていく。最終的にOKが出たL/Oを原画マンに戻して、そこでようやく原画を描いてもらいます。

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 原画ができあがったら、また演出、作監にチェックしてもらいます。OKが出たら、色指定、動画・仕上げ出しを経て、撮影・編集作業に入るわけですが、とにかく予期せぬトラブルが多くて当初のスケジュール通りに進行することはまずありません。

自宅に行っても居留守を使われる

―― 具体的にはどのようなトラブルでしょうか。

 Aさん 最大の難所は、原画マンからL/Oと原画を納品していただく際のやり取りですね。作業が思うように進まず後ろめたさからか電話が繋がりにくくなる、自宅に行っても返事をもらえない、なんてことは日常茶飯事です。とにかく納期が守られないことは珍しくありません。

アニメ業界で働く女性たちを描いたアニメ『SHIROBAKO』の主人公・宮森あおいも制作進行だった

 もちろん、原画マンがそこまで追い詰められてしまうのには事情があります。むしろ私たち「制作会社側」に問題のあることの方が多いです。単価が安かったり無理なスケジュールでお願いしていたり、そもそも絵を描いて動かすということ自体が精神的にも体力的にも大変な時間のかかる作業です。TVアニメは最終話までの脚本・絵コンテ・設定が揃っているわけではないので、脚本や絵コンテ、設定が遅れて原画さんが作業に入れないこともあります。

 また、複数話の制作が同時並行で進められていますので、若い話数のスケジュールが押すと後ろの方にしわ寄せがきます。これが最終回に近づくにつれて修羅場になる理由ですね。演出や作監が別の作業をしていてL/Oチェックが進まないと、それだけ原画マンへの戻しが遅くなり、そうこうしている間に掛け持ちしている別件の仕事が入ってしまうこともあります。

 スケジュールの崩壊による慢性的な長時間労働に加え、演出やデスクから「原画の○○さんは打ち合わせから2週間経つのに1カットも上げていないがどうなっている? 君はどうするつもりだ?」と指摘ないし叱責され、その原画マンとも連絡がつながらない。こうして制作進行は精神的に追い詰められていきます。そして、放送終了後には嫌になって続々と辞めていくのです。私の身の周りでは経験ありませんが、作品制作中に制作進行が「飛ぶ」(行方不明になる)ことも他社ではたまにあるそうです。