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原画の回収には、深夜に軽自動車を運転して行きます

―― いま、世の中では「働き方改革」が叫ばれています。アニメ制作には複雑な業務に多くの人が関わっているわけですが、効率化のためのプロジェクト管理ツールなどは導入されないのでしょうか。

 Aさん そういう便利なものはないですね。基本的に制作進行は、エクセルの表で管理しています。また、原画マンへの発注や連絡事項には、電話かLINEを使っています。

―― 原画の回収は、どのように行われているのでしょうか。

 Aさん 基本的には、私たち担当者が、軽自動車で原画マンの自宅を回ります。社用車が10台ぐらいあって、それを運転して深夜に回収するのです。アニメーターは夜型ですからね。みんなバラバラなところに住んでいるので、それを一軒一軒回っていきます。L/Oの回収、L/Oの戻し、原画の回収、計3回ですね。厳密に言うと、絵コンテと設定資料を届けるため、その前にも1度行っています。

 レターパックや宅配業者を使うこともありますが、やはり制作進行が直接回収に行くことで原画さんに必ず上がりを出していただくという意味合いの方が強いのかと思います。

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「作品が作れれば、それで本当にいいのか」

―― テレビ局のADに近い仕事ですね。

 Aさん とにかく何でもやります。基本的には演出でも原画さんでも「机で担当業務に専念していただく」ことがもっとも重要ですから、それ以外の周辺的業務はすべて制作進行のところに降ってきます。

―― 今後、アニメ業界はどのように変わればいいのでしょうか。

 Aさん 具体的なことは今後の団体交渉で決まっていくので、今は申し上げられませんが、ユニオンの坂倉さんがおっしゃるように「働いている労働者自身が声を上げていく」ことが、まずは重要かと思います。社会学者の宮台真司先生の言葉を借りれば、「任せてブー垂れるより、引き受けて考える」という態度が必要なんじゃないんでしょうか、ね。

 日本人論に持ち込んでしまって恐縮ですけど、私たちは何か大きな悲劇が起こった後になってようやく悔い改めるという流れをずっと繰り返していますよね。昔はみんな飲酒運転をやっていましたし、児童虐待だって最近になってようやく厳しく取り締まられるようになった。

 何か事件が起こってから後手後手の対策を取るわけですが、アニメ業界の恐ろしいところは過去に制作進行が過労の末に自殺しているのに、こんにちまで制作体制を含めて何も変わっていないし、変わろうとしていない。

 加えて、業界人の無知、無関心もあります。私は「雇用契約書に書いてあることがすべてでしょう」というスタンスですが、多くのスタッフはアニメへの情熱が優先されるので、労働法制にはまるで関心がありません。マッドハウスの社員のほとんどは、おそらく就業規則や給与規定すら読んでいないはずです。個人的には「作品が作れれば、それで本当にいいのか」と思ってしまいます。

 働く人が不幸にならないための仕組みは必要になってきます。