昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載「イラク水滸伝」外伝

辺境作家がバグダード「ふれあい散歩旅」で出会った素顔のイラク人たち

「イラク水滸伝」外伝――第2回:バグダードの民泊事情

2019/04/29

genre : ライフ, , 国際

 メソポタミア文明が誕生した巨大湿地帯に、豪傑たちが逃げ込んで暮らした“梁山泊”があった! 辺境作家・高野秀行氏は、ティグリス川とユーフラテス川の合流地点にあるこの湿地帯(アフワール)を次なる旅の目的地と定め、混沌としたイラクの地へと向かった。

 現在、「オール讀物」で連載中の「イラク水滸伝」では書き切れなかった「もう一つの物語」を写真と動画を交えて伝えていきたい。

◆ ◆ ◆

 バグダードを訪れて滞在する先進国の人間はひじょうに少ない。そして、その限られた人たちのほぼ全てが、「グリーンゾーン」という米軍が作った外国人向けの特別安全地帯か警備のしっかりした高級ホテルに滞在する。だが、私たちは在日イラク人の友人・ハイダル君の実家に泊めてもらい、彼のお兄さんや友だちと町を歩いた。

 貴重なバグダードふれあい散歩旅をご紹介しよう。

バグダード南西の外れ、ハイダル君の自宅前

車の左に立っているのがハイダル君。ここが「民泊」の拠点となった

 バグダードの南西の外れにあるハイダル君の自宅前。一見閑静な住宅街だが、2003年の米軍侵攻後、スンナ派とシーア派住民が武装闘争を始め、モスクを爆破したり、相手を殺害したりした結果、スンナ派が敗れて出て行った。現在住んでいるのはすべてシーア派の人々だという。

御馳走を前に正座している著者とハイダル君。イラクのメシはうまい

 私たちはハイダル君のお兄さん宅の居間に寝泊まりした。

 イラク人の生活スタイルは意外なほど日本人に似ている。家は靴を脱いであがり、基本は床に直接座る(町に住む人たちはリビングや応接間は洋風にして、ソファを置いていることが多い)。しかもイラクの人たちはあらたまったときには正座をする。しばらくすると、膝を崩してあぐらをかくのも同じ。ただし、食事はテーブルを使わず、床にビニールを敷き、その上に料理を載せて食べる。

 夜は絨毯の上に布団を敷いて寝た。

結婚式場みたいに豪勢なシェイフ(部族長)宅

シェイフ(部族長)の自宅応接間にて

 ハイダル君のお兄さんに彼らのシェイフ(部族長)のうちに連れて行かれた。客が来ると、自分のシェイフのところへ連れて行くのが定番らしい。

 その家の応接間は結婚式場もびっくりの豪華さ。イラクの金持ちは日本人の比ではない。