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30年後にどんな木になるのか……ロッテ・福浦和也、2000本安打記念植樹への想い

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/05/12

 ZOZOマリンスタジアム球場正面の海浜大通り沿いに小さなマツ科マツ属のダイオウショウが植えられている。北アメリカの東南部が原産地で「大王松」とも言われる名の通り、高さが40m以上になることもあるそうだが、現時点ではまだ大人の背丈よりも少し大きい程度の幼い木だ。福浦和也内野手が昨年9月22日の埼玉西武戦(ZOZOマリンスタジアム)にて史上52人目となる2000本安打を達成したのを受けて、住友林業株式会社の協力で4月20日に植樹された。

記念の植樹にダイオウショウが選ばれた理由

 記念の植樹にこの木が選ばれた理由は二つ。一つはZOZOマリンスタジアムが海に近いということから潮風に対してある程度の耐潮性があること。そしてもう一つが福浦選手と千葉県に縁のある樹種を住友林業が検討したところ、福浦選手の母校であり、今春の甲子園で準優勝に輝いた習志野高校の正門近くにダイオウショウが植栽されていることが分かったことからだ。福浦もその選定理由を伝え聞くと「ああ、そうだね。校門のところに確かにあった」と懐かしみ喜んだ。

 赤松や黒松と比べると、成長は緩やか。日本では花材に使われたり、公園などに植栽されている。三葉松の一種で、30~40㎝にもなる葉が3本ずつ束になってつき、しなっていく。その松ぼっくりは長さ15~25㎝と大きく成長するのだと言う。ただ40メートル以上の高さに育ち、大きな松ぼっくりが育つには30年ほどの時が流れる必要がある。植樹セレモニーに出席をした住友林業の中村健太郎 森林・緑化研究センター長から、これを聞いた福浦は遠くを眺めるように語り出した。

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「30年後ですか。その時、オレは73歳です。これから台風も来るでしょうし、雪も降るだろうけど、無事に育って欲しいですね。そして大きな木になって欲しい。通り過ぎる人たちがこの木を見て、『そういえば福浦が2018年に2000本安打を達成したなあ』と思い出してくれたら幸せですよね」

ダイオウショウの植樹記念セレモニーの様子 ©千葉ロッテマリーンズ

 植樹記念セレモニーの日は空が澄み渡り、よく晴れていた。幼い木に土をかけ、水をやった。成長を願うように丁寧に丁寧に作業を繰り返した。

 福浦は今シーズン前の1月に今季限りでの現役引退を発表している。プロ26年目。集大成となる最後の一年を迎えた。そう考えると30年という月日はそれよりも長い。悠々の時の中で千葉ロッテマリーンズはどのような戦いを繰り広げるか。どのようなスター選手が誕生するか。セレモニー中の大ベテランは見えぬ未来を想像しているようだった。

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