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「#乳がんダイアリー 矢方美紀」ができるまで 取材開始から1年、NHK担当ディレクターが見た“素顔”

2019/05/02

 元SKE48のメンバーで、タレントの矢方美紀さん(26)が乳がんを公表してから約1年。矢方さんは左乳房全摘の手術を受け、治療を続けながら、番組「#乳がんダイアリー 矢方美紀」(NHK名古屋)の自撮り日記(動画)でリアルな発信を続けてきた。脱毛やホットフラッシュなど「いま自分の体に起こっていること」を包み隠さず語ってきた矢方さん。その姿を、間近で見つめてきたNHK名古屋のディレクター・羽村玄氏が取材の日々を振り返る。

矢方美紀さん 写真提供:NHK

私の目の前でいきなり、矢方さんがウイッグを外した瞬間

 迷った。矢方美紀さんが、新しいウイッグのフィッティングのために訪れた、アピアランスサポートセンター(脱毛などの外見の悩みをケアする場所)でロケしていたときのこと。私の目の前でいきなり、矢方さんがウイッグを外しました。突然の出来事に、私はとっさにカメラを下に向け、矢方さんから目線をそらしてしまいました。抗がん剤治療が続く中で、髪の毛がほとんど脱毛してしまっている矢方さん。そんな彼女のありのままの姿を撮影しても良いのか、一瞬迷いが生じてしまったからです。

「撮影しても、全然いいですよ」

 声がする方に目線を向けると、いつもと変わらず、笑顔の矢方さんがいました。鏡に映る矢方さんは、私のことをまっすぐに見ていた。私は再びカメラのレンズを矢方さんに向けました。昨年の8月10日、真夏の出来事を今でも鮮明に覚えています。

 矢方美紀さんとは――包み隠さない、まっすぐな女性です。

©末永裕樹/文藝春秋

「SONGS」「ブラタモリ」などのエンタメ系番組を担当してきた

 私は現在NHK名古屋局に所属する35歳のディレクターです。3年前、名古屋に異動する前は、東京で音楽番組やバラエティー番組を制作するエンターテインメント番組部という部署で「SONGS」、「うたコン」、「ブラタモリ」「浦沢直樹の漫勉」など、エンタメ系番組のディレクターを担当していました。毎年、「NHK紅白歌合戦」にも大勢のスタッフの一員として参加しています。ドキュメンタリー畑を歩む人間ではありません。

 私が仕事をしている愛知は「ヤクザと憲法」「人生フルーツ」「さよならテレビ」など、話題のドキュメンタリーを次々に発表する東海テレビをはじめ、高い制作力を誇るテレビ局が多いです。型にはまらない発想で番組作りをしているライバルたちから常に刺激を受けています。12年目の中堅ディレクターとして、新しい番組企画を日々求められる中、提案したのが「#乳がんダイアリー 矢方美紀」でした。