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なぜ70歳の社会学者・上野千鶴子さんは「認知症者もひとりで暮らせる」と言うのか

高齢者の5人に1人が認知症になる時代。行動抑制という名の「虐待」なんてあんまりだ

2019/05/10

「2025年問題」のひとつは、団塊世代がすべて後期高齢者になることに加えて、「認知症700万人時代」、高齢者の5人に1人が認知症になることだという。認知症は目下のところ、原因も予防法も治療法もわからない病気。誰がなるかは確率論の問題のような気がする。なら、自分も認知症になる可能性はあると思っておいた方がよい。そしてそうならないように無駄な努力をするより、そうなったらその事実を受け入れて、対応を考えておく方がよい。

厚労省の「新オレンジプラン」は「毒みかん」?

「認知症700万人時代」に向けて、厚労省は「新オレンジプラン」を提示した。オレンジをもじって「毒みかん」と呼ぶのは精神科医の高木俊介さん。というのも、大量に発生が予想される認知症者を家庭でも施設でもケアできないとなると、手ぐすねひいて待ち受けているのは、精神科病院と製薬会社だからである。

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行動抑制や薬漬けの問題

 精神科病院ならずとも、認知症高齢者を受け入れた施設で、認知症者が受ける処遇は、似たり寄ったり。拘束や施錠で物理的に行動抑制をするか、もうひとつは薬漬けで生理的に行動抑制するか。5人に1人が認知症になるとしたら、その高齢者を待ち受ける近未来が、物理的か生理的、そのいずれかの行動抑制という名の虐待だとしたら……あんまりである。

 施設入居者の大半が家族の意思決定によるものであることには、理由がある。入居者のほとんどに認知症があり、意思決定能力を欠いているからだ。騙されて連れてこられた認知症高齢者が「出してくれ」「家に帰りたい」というのは当然の要求で、これは「帰る妄想」でも「暴言」でもない。なら独居だったら?