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藤井聡太の最年少タイトル奪取は可能か?――令和に達成の期待がかかる将棋記録トップ5

藤井聡太の最年少タイトル奪取は可能か?――令和に達成の期待がかかる将棋記録トップ5

新時代の棋界からも目を離せない理由

2019/05/11
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 平成の終わりが迫った4月29日、日本将棋連盟は「棋才 平成の歩」なるイベントを開催した。出席したのは、谷川浩司、羽生善治、渡辺明、藤井聡太ら豪華メンバー。それぞれが令和の時代の将棋界がどのようになるか問われると、羽生は「将棋界もカオスの時代になるのではないか」、藤井は「人間と一度も対局せずに棋士になる人が出てくるのではないかと思います」と予言した。

 今回は、そんな令和時代に打ち立てられる期待がかかる新記録について考えてみたい。果たして新時代の旗手となるのは誰だろうか。

1、藤井聡太の最年少タイトル奪取

 やはりといっては身も蓋もないが、まず期待がかかるのは、藤井聡太がいつタイトルを奪取するか、という点になるだろう。現在の最年少タイトル獲得記録は屋敷伸之の18歳6ヵ月で、平成2年に棋聖を奪取しての実現となった。藤井がこの記録を破るには、令和2年の年末までにタイトルを獲得する必要がある。現在、可能性があるのは今年の王座戦、竜王戦と来年の王将戦、棋王戦、叡王戦、棋聖戦、王位戦、王座戦、竜王戦の9棋戦だが、果たして……。

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藤井聡太は、すでに全棋士参加の一般棋戦「朝日杯将棋オープン」では2連覇を達成している ©文藝春秋

 なお、令和元年5月1日時点では、藤井以外に最年少タイトル獲得記録を更新する可能性のある棋士はいない。四段昇段からタイトル奪取までは最速でも1年ほどはかかるので、10代半ばにデビューして、すぐにトップクラスに上り詰めるくらいでないと、この記録は破れないのだ。

2、同時八冠の実現

 平成の終わりに、叡王戦が8つ目のタイトルに昇格した。そうなると羽生の七冠を超える「八冠王」の実現にも期待がかかるが、多士済々の戦国時代を抜け出して、天下を統べる棋士は現れるだろうか。

 現時点での最多冠は豊島将之と渡辺明の二冠。両者ともに三冠目への挑戦が確定している。それぞれが最速で八冠王を実現した時の星を計算してみたが……。

 まず豊島の場合、

名人戦で1勝(挑戦中の番勝負で3連勝中)
棋聖戦で3勝(防衛戦が確定)
王位戦で4勝(防衛戦が確定)
王座戦で7勝(挑戦者決定トーナメントで4勝、番勝負で3勝)
竜王戦で9勝(1組で1勝、決勝トーナメントで4勝、番勝負で4勝)
王将戦で8~10勝(挑戦者決定リーグで4~6勝、番勝負で4勝)
棋王戦で9~11勝(挑戦者決定トーナメントで6~8勝、番勝負で3勝)
叡王戦で9~10勝(本戦トーナメントで5~6勝、番勝負で4勝)

 と、このように勝てれば、最速で令和2年の5月頃に八冠王だ。

名人戦七番勝負でも3連勝で奪取にリーチをかけた豊島将之二冠 ©相崎修司

 続いて渡辺は、

棋聖戦で3勝(挑戦が確定)
王座戦で7勝(挑戦者決定トーナメントで4勝、番勝負で3勝)
竜王戦で9勝(1組で1~2勝、決勝トーナメントで3~4勝、番勝負で4勝)
王将戦で4勝(防衛戦が確定)
棋王戦で3勝(防衛戦が確定)
叡王戦で9~10勝(本戦トーナメントで5~6勝、番勝負で4勝)
名人戦で11~13勝(A級順位戦で7~9勝、番勝負で4勝)
棋聖戦で3勝(王位戦番勝負の前に棋聖戦の防衛戦が入る)
王位戦で12~14勝(予選で4勝、紅白リーグで3~5勝、挑戦者決定戦で1勝、番勝負で4勝)

 こちらの八冠達成は最速で令和2年の8月頃となる。

渡辺明二冠 ©文藝春秋