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皇室ゆかりの美術品に見る、紡がれ続けてきた日本の美の「粋」とは

アートな土曜日

2019/05/11
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 ときに思わず溜め息が漏れるほど、小さくて濃やかな繊細極まりない手仕事が見られたり。またあるときには雄渾そのものの、迫力の大画面が現れたり。日本の美とは、かくも多様で魅惑的なものだったのかとひたすら圧倒されてしまう。

 日本美術の殿堂たる東京国立博物館で、古今の優品を集めた「美を紡ぐ 日本美術の名品」展が始まっている。

 

教科書でおなじみの唐獅子も

 東京国立博物館、文化庁、宮内庁三の丸尚蔵館の三者が所蔵する作品から、選りすぐりの40点超をお披露目しているのが同展。博物館の所蔵品はともかくとして、皇室ゆかりの美術がこれほど一堂に並ぶ機会はめったにない。

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 今展はいわば「改元記念」の特別企画として、実現に至った。日本美術の保存・公開・修理を手がける「日本美を守り伝える『紡ぐプロジェクト』−−皇室の至宝・国宝プロジェクト−−」が、その活動の一環として、平成から令和へと移り変わる時代の節目にふさわしい展示をと企図したものなのだ。

 会場に入ると、のっけからインパクトは最大値を示す。狩野永徳による《唐獅子図屏風》(右隻)が目に飛び込んでくるのである。歴史の教科書の「安土桃山時代の文化」といった単元で見覚えのある向きも多かろう。教科書の図版はあんなに小さかったのに、実物はとにかく巨大。近寄って見ていると、2頭の獅子に食いつかれ呑み込まれてしまいそうで、身の危険すら感じる。

《唐獅子図屏風》(右隻)狩野永徳 安土桃山時代・16世紀 宮内庁三の丸尚蔵館

 同じく狩野永徳の《檜図屏風》もある。金地を従えて、檜が堂々たる枝ぶりを見せる。幹があり得ないほど太くてどこかユーモラスでもあるのだけれど、ちょっと身を引いて横に長い屏風の画面全体を見れば、笑ってしまうほどの幹の太さがちょうどいいバランスを生み出していると知れる。