文春オンライン

35歳女性の私が、大腸がんだと分かったあとに「受精卵」を凍結するまで

2019/06/06
note

 35歳でがんになりました。種類は大腸がんです。

 進行度はステージ3bで、この場合、大腸から腫瘍を取り除いたあと、補助的に抗がん剤治療をするのが標準治療(=現段階でベストの治療)とされています。

©iStock.com

 がん発覚の1年前に子どもを産んだ身としては、少しでも長く生きることがもっとも大事。そのため腹をくくって抗がん剤治療をやるっきゃないとなったわけですが、そのとき医師から、「薬の影響で妊娠できなくなるかもしれない」と告げられました。

ADVERTISEMENT

がんの前に出産した息子は人工授精で授かった

 ここで少し時間を巻き戻すと、病気がわかる1年前に授かった息子は、不妊治療の賜物でした。

 とはいえ子どもを切望していたというわけでもなく、容赦なく迫るリミットを前に、「そもそもお互い妊娠できる体なのかね」という疑問から夫婦揃って病院で調べたところ、私に排卵障害があることが判明。

 人様の手を借りないと妊娠が難しいとわかった以上、意識的に行動しない限り、子どもの顔は見られない。だったらイチかバチか、運を天に任せるか。

 そんないい加減な気持ちで不妊治療をスタートし、運良く1度目の人工授精で妊娠。2017年秋に出産したのでした。

人工授精をするため、伊勢丹の紙袋に入れた精子を病院へと運ぶ。この2年後、抗がん剤治療前に受精卵凍結をすべく、再び私はそろりそろりと精子を運んだ。