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あだ名は大王、心は謙虚 ファイターズの“ロンロン”王柏融の魅力を語りたい

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/06/23

【青空百景スカウトの推薦文】
 代打選手の推薦文、今回えのきど監督ではなく不肖私が出張って参りました。というのは監督から「河野さんの起用は青空選手のツイートを見て思い立ったので」と言われまして、いわば担当スカウトの立場です。日刊スポーツのコラムを初めて読んで以来ずっと、今日の日を待っておりました。

 えっ、河野さんはタイガースの代打の神様じゃなかったの、と思われた皆様、あの5月7日付コラムの冒頭にご注目を。そう、河野さんは「12球団箱推し」なのですよ。

 ひとり紅白歌合戦といえば桑田佳祐の名物企画ですが、ひとり文春野球も余裕で可能なのが河野さん。これは真面目に思ってます。残り10チームの監督の皆様、いかがですか代打・河野万里奈!

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鎌ヶ谷まで王柏融を追い掛ける筆者 ©河野万里奈

◆ ◆ ◆

「ワンボール」という言葉にピクリと反応してしまう。「王柏融(ワンボーロン)」と空耳して。ロンロンを応援し始めて、ちょうど半年。すっかりロンロン脳だ。毎日ロンロンのプレーを楽しみに、朝起きる。ロンロンから好守好打が生まれれば、勝手に作ったハッシュタグ「#王加油bot」を付けてツイートする。

 最近、野球中継を見ていたら信じられない情報を聞いた。ロンロンが「チームに迷惑をかけている」と悩んでいたというのだ。すでに今季5回もヒーローとなり、打率3割前後をキープし、6月20日には4番に抜擢され、グッズも売れているのに? そんなわけあるもんか! ロンロンは謙虚すぎる!(でもそんなところも好き)

 このコラムは2つの目的で書くことに決めた。1つは、前述のロンロンの言葉を全力で否定すること。2つ目は、ロンロンのファンを増やす一助となること。

 まず、ロンロンの魅力で打線を組んだ(河野調べ)。各球場および中継で見聞きしたこと。そして、野球関係者にお会いするたびに「ロンロンってどんな選手ですか?」と質問しまくった結果得られた「河野調べ」に基づく。

1(遊) 選球眼がいい
2(中) くすぐったいような無邪気な笑顔
3(三) あだ名は大王、心は謙虚
4(指) スイングがアルプスの天然水
5(捕) 台湾のファンが温かい
6(左) ハルキングに守備位置の指示をあおぐ
7(一) ありがとうございました(日本語うまい)
8(二) 大胆なツーブロック
9(右) ラッキーナンバーが9
    (9/9生、背番号9→99、9月大王)
  (投) 日本球界を長年志願していた

謙虚すぎる男 “ロンロン”こと王柏融

スイングがアルプスの天然水

 わたしは「ロンロンのヒットを見たくて」というより「ロンロンの打席を見たくて」今日もチャンネルをファイターズ戦に合わせる。それはなぜか。見たこともないくらい綺麗なスイングを魅せてくれるからだ。「スイング」というよりは「バットの出方」と言ったほうが正確かもしれない。ただの野球大好き歌手であるわたしが技術面を論ずるなど大変恐れ多いのだが、素晴らしさをどうにか伝えるべくトライしてみる。

 トップからインパクトまで、一切の回り道をせず、最短距離でボールを斬る。打たれたボールも「さっきまでバットは出ていなかったのに、僕、もうはじき返されている!?」と、ビックリしていそうなほど。無駄を極限まではぶいたスイング。その雑味の無さは、まるでアルプスの天然水だと思う。見ていると喉がスカッとする。これがわたしのロンロンのスイングに対する印象。

 そのスイングの賜物かミート力も高い。直近だと6月19日のDeNA戦、7回表二死一二塁で回ってきた打席。三球で1ボール2ストライクと追い込まれるも、そこからビクともせずボールを見極めてフルカウントに持ち込む。6球目、この打席初となるスイングでしっかり捉えてレフト前に運んだ。たった一振りで。

 もう一人の4割打者・近藤選手もキャンプの時点で「バットの軌道が凄くいい」と絶賛していた。「台湾の4割打者」という触れ込みが先に浸透して数字にばかり気を取られがちだが、スイングそのものを今一度堪能してほしい。そうすればおのずと近い未来のさらなる活躍が透けて見えてくるはずだ。

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