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『わたし、定時で帰ります。』の主人公とリンクする女優・吉高由里子の「働き方改革」

リアルなアラサー女子像を体現する女優へ

2019/06/11
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 まず、この場を借りて謝りたい。吉高由里子さん、ごめんなさい。

 いや、吉高さん主演で『わたし、定時で帰ります。』ってタイトルのドラマが始まるって聞いた時、すぐに思ったわけですよ。「これはもう、定時になったら速攻帰るウェーイなOLが主人公で、周囲を引っ掻き回す迷惑女子の話なんだろうな」って。

 が、オンエアが始まってみたら、吉高さん演じる東山結衣は「定時で速攻帰る」以外、思っていたのと全然違うキャラクター。というか、むしろ彼女は超有能。柔らかい力をもって同僚や後輩、先輩たちと協調しながら効率的に仕事を進めるビジネスウーマンでした。

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『わたし、定時で帰ります』で主演の吉高由里子 ©文藝春秋

今までにはなかった、吉高由里子が演じる新しいキャラクター

 ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系列)略して『わた定』で描かれるのは、会社や店舗のプロモーションを手がけるWEB制作会社「ネットヒーローズ」内外の人間模様。1話ごとに社員ひとりずつにスポットをあて、彼らと結衣との関係を見せることで、「働き方改革」や「ワークバランス」「ハラスメント」といった昨今の社会的課題にもフォーカスをあてていきます。

 第1話で登場したのは「皆勤女子」こと三谷さん(シシド・カフカ)。前の会社で自らの居場所を作れなかった彼女は、細かいことまでがっちり気を配り、自分と同じやり方を新人にも教え込もうとするため周囲との軋轢が。イマドキ女子の新人は反発の末、仕事用PCのパスワードを勝手に変えてバックレ退社という「あー、あるある」な展開に。

 わかる、わかるよ、三谷さん。自己評価が高くない分、「~ねばならない」「~すべきだ」で動いちゃうんだよね。で、ある種の完璧さを自分だけではなく、他者にも求めてしまう。真面目さから自分で自分を追い込むパターン。

 第3話では結衣が教育係を務める新人・来栖(泉澤祐希)がCM撮影現場で勝手に動画を撮影し、友人のみ閲覧可能なSNSに投稿したところ、それが外部に漏れて大炎上。連絡がつかなくなった来栖は海沿いの町で泥酔し、挙句の果てに無銭宿泊。

 宿から連絡を受けた結衣は現地に出向き、辞表を差し出す来栖に「それは役職に就いている人が出すもの」と受け取らず、彼の良いところを伝えて励まします。

 ……えええー、ここまで寄り添わなきゃいけないの? 社会人として絶対にNGなことをやらかして、電話にも出ず失踪するトンチキな新人に。

 そう、結衣は寄り添いフォローするんです。トンチキな新人だけでなく、転職組・三谷や、育休終わりで出社し、空回りする先輩・賤ヶ岳(内田有紀)、会社に住みつくエンジニア・吾妻(柄本時生)、はてはクライアントからセクハラまがいの行為を受ける派遣デザイナー・桜宮(清水くるみ)にまでしっかりと。

 あれ、でも、吉高由里子ってこういうキャラクターを担うタイプの女優だったっけ?