文春オンライン

安倍政権と「闇営業」――「衆参同日選見送り」報道の前に起きたこと

風が止んだときのほうが怪しい“解散あるある”

2019/06/14

「闇営業」が最近話題です。たとえばこれ。

「安倍首相、乳首ドリルに大爆笑 新喜劇メンバー表敬訪問」(スポニチ6月7日)

 新喜劇メンバーは、

ADVERTISEMENT

《得意ネタの“乳首ドリル”を果敢に披露。「乳首ドリルすな、すな…すんのかーい!」との絶叫に首相は大笑いしたが、その流れで西川が叫んだ「衆参同日(選挙)あんのかーい!」との質問には、無言で笑うだけだった。》

 すごいステージだ。闇を感じる。

一連の「営業」の流れにはどんな思惑があるのか

 官邸HPを見ると「安倍総理は、総理大臣公邸で吉本新喜劇メンバー一行によるG20大阪サミット関連の表敬を受けました。」とある。

 首相の新喜劇出演から続く一連の「営業」の流れにはどんな思惑があるのか。新聞の解説や分析が読みたくなった。

 しかし翌日(6月7日)の各紙を見ると、

「『同日選?』のツッコミに苦笑い」(朝日)

「衆参同日選『あんのか~い』」(毎日)

「『衆参同日選あんのかい!』首相、吉本新喜劇メンバーらと昼食」(産経)

 ほのぼの系の記事に終始した。

 この報道を見て確信したのだ。今回の営業=表敬訪問は首相側からすれば大成功だったと。

“ふわっとした民意”という言葉がある。かつて橋下徹氏が使った言葉だ。

 今回の一連の「営業」をセットした側からすれば、野党との攻防より、なんとなく大量露出されるふわっとした話題のほうが選挙前の民意には有効と考えたのではないだろうか。ふわっと好感度が上がった人がいれば儲けもの。

安倍晋三首相 ©JMPA

 この他にもタレントと食事したという「情報」が最近やたら多い。報道される。

 政権側が政策の提言をしたり成果を出して支持率を上げるのを“正規の営業”とするなら、タレントとニコニコしただけで労せずして好感度を上げるのはまさに“闇営業”である。

 これでよいのだろうか。私が新聞の社説を書くならタイトルは「乳首ドリルをめぐる闇」にしただろう。たぶん。