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「なまけ者になりなさい」繊細な原画に宿る水木しげるの魂と精神

「水木しげる 魂の漫画展」開催

2019/06/14

 毎週日曜日の朝9時から全国フジテレビ系列で放送中のテレビアニメーション『ゲゲゲの鬼太郎』。1年前の放送開始当初には、ねこ娘のモデル体型化でSNS上を大いにバズらせたが、2年目も人気YouTuberのHIKAKINがご本人ままのアニメキャラでゲスト出演するなど相変わらず話題に事欠かない。そんな『鬼太郎』バズりの続く中、神奈川県横浜市のそごう美術館にて『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげるをフィーチャーした展示イベント「水木しげる 魂の漫画展」が開催中だ。

『妖怪たちの棲む森』(1979年)©水木プロダクション

 この「水木しげる 魂の漫画展」では、漫画家としてはもちろんだが、何よりも画業、絵を描くことを生業とした“画家・作家としての水木しげる”に、徹底的にスポットを当てている。

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 水木しげるは1922年3月8日に大阪市住吉区に生まれ鳥取県境港市で育ち、幼少時は町内のガキ大将として君臨しつつ意外な絵の才能を発揮。絵を描くことに関しては“神童”とさえ()(うた)われて後、美術学校への進学を模索する中、第二次世界大戦が開戦。出征し、数奇な運命からニューギニア戦線・ラバウルに派遣されそこで左腕を失い、生死の境を彷徨いつつ原住民たちの歓迎とおもてなしを受けるという文字どおりの“天国と地獄”両方を体験。復員後は“貧乏”“貧窮”という名の、戦地とはまた違う“地獄”を経験。後年、NHK朝の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』(’10年)でも描かれたように「野草も食べました」(水木の妻、武良布枝・談)という窮状にあっても作品を描くことをやめず、働けど働けど一向に楽にならない暮らしぶりに対する怒りから生まれた『悪魔くん』が、「週刊少年マガジン」編集長・内田勝(当時)を経て東映のテレビプロデューサーの目に留まり、自身初のテレビドラマ化。同時に紙芝居・貸本劇画時代からの『墓場鬼太郎』が『墓場の鬼太郎』として「週刊少年マガジン」にリニューアル連載。さらに『ゲゲゲの鬼太郎』としてテレビアニメ化されるに至り、以後50年にもわたりヒットを続ける作品となった。

『ゲゲゲの鬼太郎』(1967年)©水木プロダクション